NHK「わが娘を手放した日 中国 “一人っ子政策”のその後」
“一人っ子政策”とは、1979年から2014年まで実施された中国の産児制限政策。
現在30代半ばの中国人の友人は一人っ子、彼女の夫も一人っ子。ちょうど、その政策の中で生まれたことになる。友人もその夫も都会に生まれ恵まれた生活環境で育ったようである。
21年前、広東省の小さな貧しい家庭に生まれたグレイス(アメリカ名)は、産後すぐに孤児院に預けられ、その後、国際養子縁組でアメリカへわたり養母に育てられた。
グレイスが生まれた時、実の両親には既に長男と3人の娘がおり、年収の何倍もの罰金を支払っていた。もう一人男の子がほしかったが最後に生まれたのは女の子。父方の祖母が独断で彼女を孤児院に預けたのである。
自分の生みの親を探し始め、姉のDNAと一致、アメリカの母とふたりで中国へ。
食べることで精一杯の生活をしている実の両親は借金をして親類縁者たちを招待しグレイスの歓迎会を催した。自分たちは食べたことのないご馳走を娘のために振る舞う。町で唯一の高級デパートへ行き娘に洋服を選んで買い与える。
グレイスは一晩を実の両親の家に泊まることにした。ここに残り両親の農業を手伝いたいと泣くグレイスに父は言う。
「アメリカへ帰りなさい。私たち家族は貧乏、アメリカの方が裕福で良い暮らしが出来るから。仕事や勉強に集中してほしい」
アメリカへ戻る日、家族で駅まで見送りに。父はアメリカの養母へ持ち金すべてを手渡す。養母は涙で「受け取れません」と言うが父は譲らない。「学校へ行かせてやってください」
父の痛切な思いが伝わってくる。
実家に泊まった翌日「早朝ベッドの中で母が外で洗濯をする音を聞き、家族の一員になったような気がしました」とグレイスは語る。
家族の中でいちばん早く起きる母。まだ家族が眠っている静かな空間に響く音は母が家族の為に家事をする音。その音が記憶となり思い出になるのだろうと思う。
グレイスと彼女の家族、もちろんアメリカの養母も含めて、皆に幸せが訪れますように。
そう思わせるドキュメンタリーだった。