ある冬の日、友が目を奪われるような鮮やかなグリーンのコートを着て現れた。
“パーマネント グリーン ライト”と呼ばれる色に近い。
まず、その色に惹かれ、膝長けまでのボアっぽい生地、大きめの丸襟が可愛らしく、なんと言っても友によく似合っている。
「まあ!よく似合っていること!」と、思わず声が出た。
すかさず「拾ったの!」と、彼女。
イースト・ヴィレッジの歩道にあるゴミ置き場に破れた紙袋に入って捨てられていたのを拾ってアパートへ持ち帰り、さらっと大まかに汚れを取り、更にドライクリーニングに出したとのこと。
彼女は高級ブランドを含めたくさんのコートを持っているが、私はそのグリーンのコートを着ている彼女がいちばん好き。
彼女がそのコートをストリートで見つける前、いったいどんな人が着ていたのだろう。体型はたぶん小柄、日本人でも少し小柄な友にぴったりのサイズだから。この色を選ぶ人はどんな人だろう。どうして捨ててしまったのだろう。
こんな素敵なコートをどんな人が着ていたのか興味がある。友がストリートを歩いている時に何人もの人に「それ、いいわね!」と声をかけられるように、元の持ち主も褒められていたのだろうか。でも、もし気に入ってたら捨てないか。
友のアメリカ人のパートナーも妻のそのコートがいちばんお気に入りのようで、「ずっと持ち続けてくれ、絶対に捨てないでくれ」と懇願しているらしい。そのご主人と私は、彼女が天国へ行く時にそのコートを着せて見送りたいと思っているほどである。彼女がいちばん長生きしそうであるが・・・
それほど彼女はそのコートがよく似合う。
道端に捨てられていた古いコート、友に見つけられ、これだけ愛されたらきっと喜んでいるのではないだろうかと思う。
ふと、考えてみる。私にはそれほど似合うものがあっただろうか。私でなければ似合わないものがあっただろうか。
グリーンのそのコートが似合う友はとてもユニークな個性の持ち主。
彼女の個性とコートの個性が絶妙にマッチしたということなのかも知れない。
私の個性とぴったり相性の合う何か、見つけたい、見つかったら嬉しい。