タイトル:「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか。
慶應義塾大学環境情報学部教授、今井むつみ先生によるコミュニケーション本。
*スキーマとは「自分で作った暗黙の知識の塊」自分の経験を抽象化してつくるもの、正しいとは限らない、もっていることを意識できない。
このスキーマが大きく影響しているという。スキーマは各自の経験や環境によって異なる。同じものを見たり聞いたりしても解釈が違うのである。「あたり前」や「普通」の概念も個々によって異なるということ。
また、スキーマの大元にあるのは感情、その人が好きかどうかが関係してくる。
ひとつの例として、「猫」を思い浮かべてみる。それぞれの頭に浮かぶ猫は皆違う。大きい猫、小さい猫、白い猫、黒い猫、毛の長い猫、短い猫・・・
ずいぶん前のこと、友人がお金を貸してほしいと訪ねて来た。相当な大金である。“普通”ならば気軽に人に頼める金額ではない、と私は思う。「そんな大金はない」と言うと「あなたのお母さんのお金を貸してほしい。私が直接お願いをする」と言い張る。驚いた。確かに友人は私の母と何度も会い、話もしている。でも、友人の親にお金を借りるという発想は私にはない。
「あなたの言っていることは常識から外れている」というのが、私の考え。でも、本人はそう思っていない。彼女は何かを失いたくない、何かを守ろうとすることに懸命で、その為には人にどう思われようと関係ない。可能かもしれないことは何でもする考えなのである。
これは極端な例であるが、普段の会話でお互いが理解しあえないことは多々ある。個々の経験と環境が違ことを考えればそれはあたり前のことのように思える。
友人と話していると、いろいろな場面で、コトの大小にかかわらず、話が噛み合わない時が多々ある。でも、それが理由で仲違いはしたくないと思っている。
ただ、相手の事情や心情がその時には理解できず、あとになってわかるのがもどかしい。