地方で個人事業を行っていた友人が、突然、高齢者専用住宅に入居した。まだ、50代である。

 

きっかけは、今年の元旦に発生した能登半島地震。彼女が住んでいた地域も揺れが大きかった。今までに数え切れないほどの地震を経験したが、その時の地震はテレビで公表された実際の震度よりも大きく感じ、初めて不安になったとのこと。

 

「親しい友人も、頼れる人もいないところで、このまま老後を迎えることが不安になった」という。

行動力のある彼女はすぐに事業の閉鎖手続きをすすめ、半年弱で新しい土地に引っ越した。

 

「まだ、早すぎるんじゃないの?」と驚いたが、その言葉は心におさめた。その人が抱える不安は他の人には本当のところでは理解が難しいと思う。彼女の心の中に突然わき起こった大きな不安は彼女にしかわからない。

 

住まいは快適だという。新しい土地に住みながらお勤めもしている。勉強したいこともあると言う。

 

「あなた、いつも決断が早くて、行動力があるわね!」「そう、それで失敗することもあるのよ!」

 

海外生活が長く、とても聡明で美しい女性である。まだまだ何か出来るし、これから新たな出会いもあるかも知れない。今はひとつの所に収まったようなカタチだけれども、いつ、また、新しい人生を切り開くかわからない人である。

 

振り返れば、彼女にはいつも驚かされている。NYから他州に引っ越した時も、急に日本へ帰国すると決めた時も、突然、起業すると決断した時も。でも、今回のことががいちばん驚いた。

 

この秋に会いに行く約束をしている。もしかしたら、また何かが変わるかも知れない。

 

「人生は計画通りには行かないけれど、いつだって、どこだって、何かを始めるチャンスはある」と思わせてくれる尊い友人である。