ペルーのイカという都市にある小さな村ワカチナ。

砂漠内の小さな湖の周囲にあり”南米のオアシス”と呼ばれている。

 

砂漠のくぼみに突然現れるオアシスはまるで絵に描いたようである。子供の頃にイメージしたそのもので、初めてテレビの画面で見た時には感動し、いつか行ってみたいと思った。

 

ところが、このオアシス。ずいぶん前に枯渇してしまった為に現在は人工的に注水が行われているとのこと。この事実を知った時には驚き、呆然とした。

 

アメリカのニューメキシコ州サンタフェから車で約30分くらいの所にあるチマヨという小さな村に、“奇跡の砂”で有名な古い教会“サントワリオ・デ・チマヨ”がある。この教会の地面から湧き出る砂を身体の病んだ箇所につけると治癒すると言われ、その昔、遠方から訪ねてくる巡礼者が絶えなかったとのこと。砂が湧き出るという小さな部屋の近くにはたくさんの松葉杖が飾られている。松葉杖で教会にやってきた人たちが、奇跡の砂によって治癒し、帰る時にはもう松葉杖は不要になり置いて行ったとの逸話。

 

小さな部屋にあるそれほど大きくない穴にはスコップが用意されてあり、誰もが砂を持ち帰ることができる。売店から砂を入れる容器を買い赤土色のサラサラした砂を入れて立ち上がった時、作業員の方がドタドタやってきて蓋のついたバケツを数個床に置いた。その中には砂が入っており、それを穴に補充していくようである。

 

「えっ!」と思った。

 

驚いたが、失望はしなかった。あの教会の中に一歩足を踏み入れた時、独特の空気を肌で感じたのである。奇跡の砂を信じてやってきた何百万人、それ以上の数え切れない人たちによってつくられてきた何かを感じたのかも知れない。

 

その昔、教会の砂は本当に誰かの病を治し、それが自然に湧き出る砂として言い伝えられ、持ち帰った人の願いが込められた砂は信じるという力を与えたのではないだろうかと思う。

 

ペルー・ワカチナのオアシスも昔そこに水が湧き出た頃の人の感動や願いでつくられた何かを感じることができるのかも知れない。