一昔前に話題になった本は、大きな書店でも見つからないことが多々ある。売り切れだったり、もう扱っていなかったり。

 

突然、そんな本が読みたくなることがある。アマゾンで購入すると送料がかかる。たった1冊の文庫のために送料は・・・と思い、散歩がてら書店へ行く。というよりも「今すぐに読みたい!」という気持ちが強い。

 

自宅アパートから徒歩圏内に3軒の書店がある。まず大きい書店へ行く。見つからない場合、お取り寄せしましょうか、と親切に言ってくださるが、時間がかかる。次はやや大きめの書店へ行ってみる。

ここにもない。まさかあの小さな書店にはないだろうと思ったら、あった。探していた本が、ひっそりと1冊だけ。それが1度、2度、3度、何度も続いた。何故か、私が探している本はそこで見つかる。

 

ならば最初からその小さな書店へ行けばよいのだが、とりあえず大きな書店へ向かう理由が自分でもわからない。たぶん、最初に行ったらそこにはないような気がするから・・・かな。

 

先週末、突然「エゴイスト」(著:高山真)が読みたくなった。昨年、映画が公開されたのは知っていたが観ていない。ふとしたことから興味を持ち、まず小説を読みたいと思った。

 

かなり評判になった作品であるからどこの書店にもあると思った。そして、まず大きな書店へ行ったが在庫なし。少しの期待をもって最後に立ち寄ったいつもの小さな書店の本棚に1冊だけあるのを見つけた。後書きをいれても189ページの薄い文庫本である。

 

一気に読み終えた。想像していた「エゴイスト」とは違っていた。同性愛者である主人公とはまったく異なる環境にいる私だけれども、とても自然に、すんなりと読み進むことができた。

 

主人公は自分の愛が本当の愛だったのだろうか、自分のエゴだったのではないかと思い悩む。自分を突き詰めて考えたら愛がわからなくなってしまった。

 

この小説は同性愛者に限らず、恋愛に限らず、誰かの為に何かをしたいと思い行動したことがある人ならば、主人公の苦悩と似たような気持ちに少しは心当たりがあるのではないだろうか。

 

「龍太と、勘違いでなければ私のことも愛してくれていたこと、よく知っている」

(主人公の恋人の母)

 

「愛じゃないですよ。っていうか、僕、愛がなんなのかよくわからないですもん」(主人公)

 

「ううん、あなたがわからなくてもいいの。私はね、私達が受け取ったものが愛だと思っている。それでいいんじゃない?」(主人公の恋人の母)

 

あの時の自分にエゴがなかっただろうか、読み終えた後にすっと私の心に問いかけてきた小説。