“We are all works of art in progress” (Carmen Dell'Orefice)

 

「すべての人は制作中の芸術作品である」

 

数日前に93歳の誕生日を迎えたアメリカの現役モデル、カルメン・デロリフィチェさんの言葉。 

 

人はそれぞれ、その人の作品を創造している。余計なことに惑わされずに、自分自身をよりよく創造するために精進するべき、と言われたような思いである。

 

カルメンさんが15才の時にデビューを飾ったヴォーグの表紙から最近までの写真やランウェーを歩く姿を見ていくと、50代以降からが神々しいほど美しいと感じる。

 

モデルの仕事は「せりふのいらない女優。何が求められているのかを洞察して、言葉を言わずに“生きた本質”をレンズを通して表現する」と語る。

 

「人に自分の身体を使ってもらい、相手が求めているものを表現するために、何が求められているかを感覚的に理解するの。自分で服を選ぶわけではなく、モデルとして服を見せるわけだけど、相手の求めているものに黙って自分らしさをプラスするという責任があるの」

 

彼女は3度の結婚、2度の経済的試練を経験している。

 

最初の結婚によって財産を失い、2009年、78才の時にバーナー・マドフによる巨額詐欺事件でほとんどの財産を失った。彼女は交際中の男性からマドフ被告を紹介され、親しい友人となったとのこと。

 

その時のことをインタビュー(テンプホールディングス株式会社のグループブランド「PERSOL(パーソル)「はたらいて、笑おう。」)で以下のように語っている。

 

「どのような選択肢が自分に残されているのかを把握するのは、自らやらなくてはならないこと。何が現実で、私の願望や空想でないのか。私は現実モードだったわ」

 

「それが現実で、変えられないことだと理解したわ。自分が人生で2回目の一文無しになる状況にいることが分かっていたの。こう考えました、私にはアパートメントがある、と」

 

「話がうますぎるときはいつも、世界が苦しんでいたり何も得られていないのに、自分だけが多くを得ている時。もっとよく知っていたらと思うわ」

 

「ただ、とても深い友情の落とし穴に落ちたのだと思ったわ。私たちはヨットで旅をしたり、マドフの息子が婚約した時パーティをしたりしていましたから、とても親しかったのよ。私は部外者ではなく、内側にいたの。そんなことは、それまで起こったことがなかったし、私よりもずっと賢い人々、エリー・ウィーゼルのような、その基金のシステムに関わった全ての人々が、そこから利益を得ていたの」

 

「それは、否認の構造、強欲の構造でした。自分が隣の人よりもずっと多くを得ていても問題なかったの。いいえ、結局は問題だったの。アンバランスなことが起こっていたのよ。残りの世界よりずっと多くを得ている時は、必ず狙われます、それが*トリクルダウン以上のもので、お互いのことを考え、文化を尊重して、注意深く分配されたものでもない限りは」

 

(*トリクルダウンとは:富裕層がさらに富裕になると、経済活動が活発化することで低所得の貧困層にも富が浸透し、利益が再分配される、と主張する経済理論)

 

人生におけるバランスというものを深く考えさせられる。

 

2022 年のインタビューより

 

「人生においてほとんどのことは少ない方が豊かです、愛をのぞいては」

 

経験を重ね、現在も輝き続けるカルメンさんの言葉には説得力がある。