都市伝説 | Y's Diary

「都市伝説」とは、一般の人々により語られ信じられている口承の一種。 実際にありえないような話に真実味と不安を加え、本当にあった事実として語られる。(辞書より)

 

2001年11月15日、アメリカのノースダコタ州で日本人女性の遺体が見つかった。遺体の近くには飲み干されたシャンパンボトルが2本あり、検視から複数の薬の飲用が確認されたがそれが死をもたらしたのではなく、死因は凍死である。持ち物から当時28才のT・Kさんと判明。ニュースでは、T・Kさんは映画”Fargo”(1996年)の埋蔵金を探し求めてやってきたと報道され、それがアメリカ全土に都市伝説として伝わった。

 

11月初旬にミネアポリスから入国。バス、ヒッチハイクで現地まで辿り着いた。途中、トラックのドライバーが不審に思い声をかけ最寄りの警察署まで送り届ける。彼女はそこで警官と話しをしている。

しかし、彼女の英語力は会話が出来るほどではなかったらしく、ここで大きな誤解が生じる。

 

彼女が”Fargo”(ファーゴ)という地名を何度も繰り返し言ったのを、警官が映画のFARGOと関係があると解釈したと言われている。

 

2003年、この都市伝説の真実を調べようとアメリカ人映画監督が彼女の足取りを追って短編ドキュメンタリー映画を作成した。

 

タクシー・ドライバー、警官、ホテルの従業員、バーで彼女と話しをした男性、彼女を自分の家の窓から見かけた女性、彼女がヒッチハイクした車のドライバーなどの証言を取っている。

 

すべての証言者たちが、彼女は季節はずれの軽装だったこと、カタコト英語の若い女性だったと話す。バーで知り合った男性の話しを聞くと、ふたりは会話が成立していたようにも思える。これは、聞き手の理解力または想像力の違いだと思う。

 

警察官以外は誰も彼女からFARGOという言葉を聞いていない。「綺麗な星が見える場所へ行きたい」と言ったとふたりの証言者がいる。

 

「彼女はお腹を押さえて、キャンサー(癌)という言葉と6ヶ月という言葉を言った」という警官は、彼女は癌を患っていて余命6ヶ月だと、解釈した。しかし、検視では彼女の身体から癌は見つかっていない。

 

T・Kさんは東京の旅行会社で働いていたが倒産して無職になった。丁度、同じ頃に恋人だったアメリカ人男性が仕事の事情で日本を離れた。その男性は既婚者だったという。その元恋人の出身地がFARGOであり、彼女は過去にその男性と何回かミネアポリスを訪れたことがある。

 

最後の夜、彼女はホテルから元恋人に電話をして40分間会話をした記録がのこっている。彼女が他界してから3週間後に両親のもとに届いた手紙もその時に書いたとされている。内容は遺書のようなものだった。

 

T・Kさんは仕事を失い、恋人に去られ、恋人の生まれ故郷を訪ねようと思った。

それ以外のことは想像でしかなく、彼女自身しか知らない。

 

にもかかわらず、2014年にトレジャーハンター・クミコ(Kumiko, the Treasure-Hunter)というタイトルで長編映画が公開された。

 

都市伝説は都市伝説でしかない。

 

どうか、安らかに。