NHK番組 “ヒトはなぜ歌うのか”

 

*    トーマス(元運転士)は10年以上前から認知症を患っている。

すぐに忘れてしまうことから会話が難しい。大勢の人の中でひとり誰にも声をかけられないことに孤独を感じる。

 

でも音楽は忘れない。17才で妻と出会った時に街に流れていた歌、”スイート・キャロライン”(ニール・ダイヤモンド)は今でも歌える。まるで脳内の中のカーテンが開いたように、金曜の夜に妻と出かけた時のことを想い出す、と言う。

 

*    ポール(元ビジネスマン)は現在71才。10年くらい前から若年性認知症を患っている。若い頃はバンド活動に夢中になり、ビートルズの曲は今でも全部覚えている。音楽を聞くとその頃に戻ったような気がする。言語は忘れるが、音楽は思い出せる、消えない。

 

トーマスとポールは、2週間に一度認知症患者の施設を訪れてコンサートをする。それまで生気のない顔で椅子に座っていた人達が、音楽が始まると表情が一変する。顔に活気が戻り、歌を口ずさみ、立ち上がって踊りだす人もいる。家族の顔を思い出すのが難しい人達が心から音楽を楽しんでいる。

 

認知症のトーマスとポールの間に何か興味深いことが起きている、音楽には何か特別な力がある、と専門家は言う。

 

音楽は快感と記憶をつなぐ報酬系神経を刺激するとのこと。

特に報酬系がいちばん出る思春期に聞いた音楽がそのまま記憶されていることが多いらしい。

 

トーマス「音楽は人生にずっと寄り添ってくれる、旅たつ時まで」

 

私にも、トーマスの言うように脳内のカーテンが一瞬にしてひらく曲がある。

「雨にぬれても」(原題: Raindrops Keep Fallin' on My Head)映画『明日に向って撃て!』の主題歌。歌詞の意味もわからない洋楽のメロディーが子供だった私に強い印象をのこした。

 

たまたま通った場所やTVのコマーシャルなどでこのメロディーが聞こえてくる度に、小学校低学年の頃の自分、父母、祖母、兄、妹、家族みんなが家の中にいる光景が現れる。家族がそれぞれに思い思いのコトをしているが、そこが家、そこに子供の頃の幸せが象徴されているような気がする。

 

楽しかった想い出、愛情をたくさん感じたひと時が記憶から消えないことは嬉しい。