ヴィクトール・フランクル著「夜と霧」の新版を読み返している。
ユダヤ人としてナチス・ドイツの強制収容所に囚われ、奇蹟的に生還した著者の「強制収容所における一心理学者の体験」(原題)である。 「この本は冷静な心理学者の眼でみられた、限界状況における人間の姿の記録である。 そしてそこには、人間の精神の高さと人間の善意への限りない信仰があふれている。(みすず書房 サイトより)
「人は強制収容所に人間をぶちこんですべてを奪うことはできるが、たったひとつ、あたえられた環境でいかにふるまうかという、人間としての最後の自由だけは奪えない」
「まっとうに苦しむことは精神的に何かを成し遂げること」
「人生はどんな状況でも意味がある」と説き、生きがいを見つけられずに悩む人たちにメッセージを発し続けた。
ふと、杉原千畝氏に関しての本はないかと書店で探したが見当たらない。スタッフの方に尋ねたら、児童書として発行されたものがあるらしいが現在在庫切れ。
第二次世界大戦中、日本領事館領事代理として赴任していたリトアニアのカウナスで、ナチス・ドイツによって迫害されていた多くのユダヤ人にビザを発給し、彼らの亡命を手助けしたことで知られている。
「素晴らしい方ですよね。こういう方のお話が伝え継がれることを願っているんです」と書店のスタッフさん。
NYに住んでいた数年前のある日、自宅アパートの近くにあるスーパーマーケット内で「あなたは日本人ですか?」と声をかけてきた女性がいた。
「私はロシア系ユダヤ人で現在NYに住んでいます。私の祖父母が杉原さんにビザを発行してもらいました。彼が私の祖父母を助けてくれたのです。そのおかげで、いま、ここに、私がいます。私たち家族は杉原さんに感謝し、日本人に対して特別な感情を抱いているのです」
彼女の想いを私の中だけにしまい込んでおくのは心が咎めいた。日本の杉原千畝記念財団宛に手紙を書いた。偶然出会った彼女と彼女のご家族の強い想いを伝えたかった。
後日、同財団の担当者の方からご丁寧なお返事を頂いた。現在海外に住んでおられる杉原氏のご子息に私が書いた手紙を送って下さるとのこと。彼女たちの想いが杉原氏のご家族に伝わることが嬉しい。
書店のスタッフの方が言われる通り、今後も伝え継がれるように願っている。