「風のガーデン」 2008年 TVドラマ
脚本:倉本聰 出演:中井貴一、緒形拳、黒木メイサ、神木隆之介
主人公の医師が絶縁状態になっている北海道富良野市の家族の元に戻るまでを描いたドラマ。
麻酔科医の白鳥貞美(中井貴一)は、東京の大学病院の准教授として活躍していたが、6年前、障害をもつ長男・岳(神木隆之介)の子育てに悩みを抱えたまま他界した妻、その時に不倫をしていたことから父親(緒形拳)に勘当され、北海道富良野市に住む家族とは絶縁状態になっていた。しかし、貞美は自分の余命を知り、最後の時を家族のいる富良野で過ごすことを決める。
貞美の父がつくる花言葉が面白い。
「アノネ、残り物に福って、あれウソよ、そうそう、残り物はやっぱり残り物」
「季節の変わり目を告げる神の鐘」「がんばりすぎたら虫もつかなかったの」
「どうせあたいは田舎物、街の女にゃなれないの」「受付嬢は使い捨てにされる」
「早熟な乙女はわりとはやく老ける」「行き遅れの危険な色気」「去年の恋の名残の涙」
「乙女の祈り」
ドラマの中で長男・岳が「乙女の祈り」をピアノ演奏する場面が何回かある。
この曲を聞くと故郷を想い出す。駅前近くにある商店街の信号のメロディー。
帰省するたびに聞こえてくるメロディーである。春、夏、秋、冬、いつの季節もこの曲のメロディーにのって想い出が蘇る。
小学生の時の同級生に、仲の良いまりかちゃんという友だちがいた。彼女は成績優秀で絵もとても上手だった。幼少期からピアノを習っていて、彼女の家へ遊びに行く度に、私はピアノを教えてもらった。「ねこふんじゃった」は完璧にできるようになった。ふたりで大騒ぎしながら、楽しく、歌いながら、覚えた。しかし、乙女の祈りはそうはいかなかった。途中で、それもわりと早い段階で断念した。
いつも、まりかちゃんが最後まで弾いて聞かせてくれた。「もっと弾いて、もっと弾いて」というと他の曲も惜しまずに披露してくれた。
中学では隣のクラスになりそれでもまだ交流があったが、それぞれ違う高校へ進み、会う機会がなくなり、その後、まりかちゃんは早世してしまった。
故郷の信号のメロディー、ずっと変わらずにいてほしいとひっそり祈っているのである。