金曜日の午後、友人と恵比寿駅西口で待ち合わせた。少し早めに到着した私は改札口から少し離れた場所で、溢れるように出て来る人の大群を眺めていた。
友人からラインが入る「あと2駅」と。
もう少しだなと思って改札口から目を離しふと横を見ると、人混みの中に学生の時に親しくしていた同級生の姿を見たような気がした。ドキッとした。体全体の雰囲気が若すぎるような感じがしたが目の前を通り過ぎた顔は本当によく似ている。早足に歩く彼女の後ろを追ったが彼女は日比谷線乗り場のエスカレーターをトントンと駆け下りて行ってしまった。
東京に不慣れな友人を待たせてはならないとJR西口へ戻ったが、まだ胸がドキドキしている。
「あんなに綺麗になって、あんなに若々しくて」
本当に彼女だろうか。曖昧な気持ちでありながらも、あの美しい生き生きとしたオーラに気後れした。懸命に走って声をかけなかったのはそういう理由かも知れない。学生の頃の彼女は目立つタイプではなく、どちらかというといつも控えめな感じだった。
改札口から友人が現れた。私達は少し遅めのランチとお茶をして、その後に駅ビルで買い物をしてから友人を西口改札で見送った。その後、私は日比谷線改札を通り上野方面行きのホームで電車を待った。数分後に電車が入ってきて中から数人の乗客が出てきた。
驚くことに、さっき昔の同級生かも知れないと思ったその女性が私のすぐ目の前を通り過ぎた。
同じ服装、間違えようがない。
「あっ、違う」と、どこか安堵した。
自分の中に潜んでいた思いがけない感情が現れ、戸惑った出来事だった。