樹木希林さんの言葉である。

 

晩年、樹木さんが多くの時間を一緒に過ごしたバース・カウンセラーの志村季世恵さんという方がいる。その志村さんに「私が私でいるために、あなたにそばにいてほしい」と樹木さんが言われたとのこと。「自分が自分でいる為には人の力が必要」なのだと。

 

深い言葉だと思う。

 

昔、強烈な個性を持った友人がいた。彼女の横暴さに困惑している私に「そろそろ、私に慣れてよ。私はこういう人間なんだから」と彼女は笑いながら言った。

 

彼女は彼女らしく生きていた。でもまわりの何人かの人は我慢をしなければならなかった。これは樹木希林さんの言われていることとは大違いである。

 

樹木さんは志村さんに対して(他のどんな方にも)誠心誠意に向き合い、志村さんの相談相手にもなっていたようである。お互いが親身になって相手の話しを聞き、そこに信頼関係が築かれていったのだと思う。

 

また、樹木さんは「無駄を嫌う。人が手間暇をかけたもの、物、人、ことがら人が手塩にかけてつくったもの、人の時間、人の思い、それを無駄にすることを嫌った」と、娘の内田也哉子さんは語る。

 

たいへん倹約家だったとご自身も語っているが、そういうことも樹木さんらしいということなのだと思う。

 

2018年、FCI NYでのインタビュー映像がある。

当時、私は現地の朝のFCIニュースで観ていたが、ひとつひとつの質問に誠実に答えられていたのが印象的だった。また、視聴者へのメッセージの言葉が心から発せられているようでとても感動した。

 

「ものには表と裏があってどんなに不幸なものに出会ってもどこかに明かりが見えるもんだと思っています。もちろん、幸せはずっと続くものではない。何か自分で行き詰まった時にその場所だけ見ずにちょっと後ろ側から見てみるという、そのゆとりさえあれば、そんなに人生捨てたものじゃないなと思うんです。物事を面白く受け取って、愉快に生きて、お互いにと言ってはおこまがしようですが、あまり頑張らずに、でもへこたれないで」

 

優しさを感じるメッセージ。

 

「自分が自分でいるために」の言葉を改めて考えてみたいと思う。