私は数年前にコンピューターを駄目にしたことがある。

テーブルの上のコンピューターを稼働させ、珈琲カップを右手に持ち、左手も何だか忘れたが何かを持っていた。コンピューターからは20センチ程離れていたと思う。PCのキーボードの上に飲み物のカップがくることはない。そこは充分に気をつけていた。

 

その時、ベランダから入ってきた小さな虫が私の顔をめがけて飛んできた。両手が塞がっていた私は素早く顔を左右に大きく振った。その勢いでカップを持っていた右手も大きく揺れ、中に入っていた珈琲がPCのキーボードの上へ派手に飛び散った。

 

たったそれだけのことで10数万円のPCを1台使えなくした。

業者に電話をして相談、実際にPCをみてみないとわからないが、復元できるかどうかは保証できないという。保証はないが高額な料金はかかる。

 

そのPCは諦めた。

 

現在は絶対に同じテーブルの上に液体は置かない。飲み物を口にする時はPCから離れ、何か飛んできた時のため両手をふさがれた状態にはしない。他人から見れば滑稽なほど気をつけている。

 

友人のアパートに泊まっていた時のこと。友人が出かけた後にシャワーを浴びようとドアにチェーンをかけた。古いアパートなのでチェーンもずいぶんと古びたものである。洋服を脱ぎかけると、ドアに鍵を差し込む音、友人が忘れ物を取りに戻って来たらしい。

 

「ごめん、シャワーを浴びることろだったの」とチェーンをはずす。

 

「チェーンをしたら、何かあった時にどうするの?部屋の中で倒れていても外から開けられないでしょう」と友人がいう。

 

友人は夜眠る時にもチェーンをかけないという。NYのアパートである。不用心な気がするが、おそらく、彼女は前に何かあったか、知り合いにチェーンをかけていて不都合なことがあったのだと思う。

 

昔知り合った女性は自宅に電話をつけていなかった。その数年前、夜中の電話でとても大切な人が事故に合ったことを知らされ、それ以来、夜電話が鳴るたびにその時の事を想い出すのだという。

 

人の行動にはそれぞれ何か理由があるのだろうと思う。