季節はずれの暑さだった日曜日、浅草から国際通りに出て人形町へ向かって歩いた。

いつも通り、進行方向左側の道を歩く。小さなレストランやケーキ屋さんがいくつもあり、そこを通るだけで楽しいのである。

 

ところが、この日は日差しが強すぎて暑さに耐えられなくなり、信号を渡って反対側の日陰になっている歩道を歩くことにした。「ああ、こんなお店があるのだなあ」といつもの通りにはない風景を見ながら歩いた。

 

蔵前まで来ると、外観がヨーロッパ調の本屋さんがあった。外にいくつかの小さな本棚と箱が置いてあり、そこに日本の書物の他に洋書や絵本がある。100円コーナーもある。ガラス窓から店内を覗くと

中央に机がありそこに店員さんが座って何か作業をしている様子である。お客さんはひとりもいない。なんか入り難いなあと少し躊躇したが、真鍮のドアノブをまわして茶色い木の扉を開いた。

 

店員さんと挨拶を交わし、店内を見せてもらう。照明がいい具合に落とされており心が落ち着く。異国の本屋さんのような空間である。木の床の小さな軋みを感じながらゆっくりと本を眺める。ヨーロッパの絵本に目が留まる。日本語でも英語でもない文字が並ぶ。

 

入口付近の本棚から順番に奥まで進んで行く。イングリット・バーグマンの伝記(翻訳本)を手に取るとずっしり重い。これから人形町まで持って歩くには重すぎる。棚に戻した。今度来た時にまだここにあるだろうか、と少し未練が残る。

 

ほどなくして次々にお客さんが訪れ、狭い店内が混雑してきたタイミングで外へ出た。

 

古書店・Frobergue(フローベルグ)

なんとなく「雨の日に入りたい本屋さん」と、青空の下で思う。

 

小さな非日常は少しだけ想像力を豊かにしてくれるのかもしれない。