難病・顔面動静脈奇形の河除静香さん。顔に血管の塊ができるという生まれつきの病気である。

これまでに血管の塊を切除する手術を40回も繰り返している。口と鼻が変形し、出掛ける時はマスクが必要。「マスクなしでは、街を歩くだけで傷ついて帰ってこなくちゃいけない」という。

 

子供の頃からいじめが繰り返された。

「知らない」ということがイジメにつながったと思う、という河除さん。

皆がこの病気のことを知っていれば虐めはなかったかも知れないという。

知らないことで生まれる社会の偏見。

 

恋愛をする年頃になった時「こんな私なんて」と臆病になった。

友人に『私みたいな顔だと、恋愛なんてできないよね』と漏らすと、友人が「なんで、そんなことを

言うの?」と泣きながら叱ってくたとのこと。

 

それからは積極的になり、どんどん自分から男性と話す機会をつくって行ったという。

 

「私が凄いんじゃなくて、アグレッシブになるということが凄いんだなあと感じました」

「私なんてだめ・・・」と思っていた時は何もチャンスがなかったけど、

「私でも恋愛していいんだ!」と思うようにアグレッシヴになったら出会いがあった。

 

現在はご結婚をなさりふたりのお子さんがいる。

いろいろなインタビューで過去に虐められたことを語っているが、成人式の時、中学の頃に虐められた男性に「あの時は悪かった、ごめん」と謝られ、その時に恨みがすっとなくなった。それで終わったことなのに、まだいろいろな場で虐められた過去を語るのは罪悪感がある。謝ってくれたのに、という思いがあるというのだ。虐めたのはその彼だけではないのだが、心にひっかかるものがあるという。

 

河除さんは「見た目問題」を理解してほしいと、ひとり芝居を通して訴える活動をしている。

その一節。

 

「俺は悪魔だ!お前の心が俺を呼んだのだ」「俺がやつに復讐をしてやろう」

「あぁ…見たい。やつが苦しみ、悶えるさまを。憎い!私のことを化け物だと罵ったやつが」

 

「このような顔に生まれた者にとってこの世は行きづらい。周りからは受け入れてもらえず、とても

 孤独だ。そのうえ私はこころまで化け物になろうとしている。だが、そんな私の心をSの言葉が目覚 

 めさせてくれたのだ。私の心を晴らすのは復讐などではなかったのだ。私はただ認められたかっただ

 けなのだ。自分も一人の人間なのだと!もう誰かを恨むのはたくさんだ!私は人でいたい!」

 

深くささる言葉。

 

勇気を出して積極的になると、不可能だと思い込んでいたことを可能にする力がある。

河除さんの言葉は多くの人の励みになっていると思う。