20代の頃の上司が話してくれた海外出張での出来事。
上司の宿泊しているホテルの部屋に同じ仕事をしている親しい友人が訪ねて来た。
ルームサービスを取り部屋で食事をして過ごした。夜遅くに友人は自分のホテルに戻って行った。
(上司もその友人も女性)
しばらくして、その友人から電話が入った。上司の部屋に封筒を忘れたという。
友人はそこには契約書が入っていることも伝えた。
「お願いだから、中を開けないで。中を見ないでくれるかしら」と懇願された。
数十分後、息を切らして友人は部屋へ戻ってきて「ありがとう」と頭を下げて出て行った。
上司は本当に封筒を開けなかったという。
同業者、狭い業界、中には契約書が入っているといえば、見たくなるのが人情。
「私が彼女の立場だったら、その時の彼女の気持ちが手に取るようにわかる。だから、開けなかった」という。
ビジネスに関しても私生活に関しても非常にアグレッシブな上司である。
攻撃的で押しが強く、常に自分のビジネスにとってプラスになることを考えている。
普段の言動からすると上司のその時の行動はとても意外だった。
こういう話を聞かせてもらい、人生で大切なことを教えてもらっているような気がする。
当時のオフィスがあったビルの同じフロアーに、知名度の高いジャーナリストの個人事務所があった。
その頃の彼は40歳くらいだったと思う。TVの出演も多く、ファンも多かった。たまにオフィスに出入りする気配を感じたことはあるが、実際にお会いしたことはない。バレンタインデーの日、彼の部屋の
ドアノブに可愛らしい袋がかけてあった。誰かからのギフトらしい。ギフトの箱に比べてそれを入れてある袋が小さい。綺麗にラッピングされた箱と、小さなメッセージ・カードが丸見えである。
普段、とても優しく、常識、良識のある先輩が、「見て、見て!きっと若い子からのプレゼントよ。
なんて書いてあるのかしら」なんとそのカードを開いて読んだのである。 ええ〜?! 驚いた!
人は見かけによらぬもの。
誰もが普段のイメージからは想像も出来ないような意外な側面をもっているのである。