意味:傘と提灯は、必要な時以外は忘れがちな物だから、貸す時は返してもらえないつもりで貸せと

   いうこと。

 

三方を海に囲まれている故郷の風は強い。強風の日は安い傘だと一吹きで骨が折れる。5ドルで買った黒い折りたたみ傘が強い風で壊れた。近くにあったディスカウントショップで300円の折りたたみ傘を買った。1回使用しただけですぐに壊れた。

 

今度はデパートで入念に選んだ。長傘で骨組みがしっかりしたもの、かつ気に入った模様、たぶん、

これまでの人生でいちばん高価な傘を買った。その傘を3年間使い続けている。強風にも耐えてくれている。しかし、この傘を「戻ってこないつもりで人に貸せるか」と言えば、それは出来ない。たくさんある透明のビニール傘を「返さなくていいから」と渡すだろう。

 

20代の頃、結婚して子供が生まれたばかりの友人を訪ねた。

朝から快晴の日だったが午後になり帰る頃に雨が降り出した。友人が傘を貸してくれるという。

見るからに高そうな立派な長傘を差し出されたが、私は「こんな良いのではなく、そっちの透明の傘の方がいいわ。いつ返せるかわからないから」と言ったが、彼女はそのお洒落で高価そうな傘を持って行ってくれという。

 

「返さなくていいの。使ったら捨てて。この傘、夫の前の彼女の物なの。結婚した後もずっとここに

おいてあって、私が捨てるのはシャクだからそのままにしておいたけど、丁度良かったわ」と笑いながら言う。

 

そういうことならと、遠慮なくその傘を使わせてもらった。

その後、その傘を使い続けたのか、捨てたのか、人に貸したのか、まったく覚えていないが、

友人の気が晴れたのならそれで良かったと思うのである。