「月の輝く夜に」(Moonstruck 1987年)
主演:シェール(Cher)、ニコラス・ケージ
NYのブルックリンに住むイタリア系家族、ロマンチックコメディー。
婚約者の弟と恋に落ちる中年女性をシェールが演じる。
家族間の問題を交えながら最後はハッピーエンド。
一夜にして美しく変貌する主人公、イタリアン・ファミリーの絆、NYの夜景。
ドタバタしながら、生活感あり、愛あり、笑いあり、夢あり、賑やかな映画。
ちょうどNYを訪れていた時、当時のボーイフレンドがシェアーの熱狂的なファンだったこともあり、
寒い中、アッパー・イーストにある映画館で観た思い出がある。
あの頃の懐かしさもあり、大好きな映画。
舞台はNY、季節はクリスマス、このふたつが揃う映画は私にとって最強である。
「スモーク」(Smoke 1995年)
この映画の原作は作家ポール・オースターの短編小説『オーギー・レンのクリスマス・ストーリー』。
ニューヨーク・ブルックリンの小さなタバコ屋に集まる人々を描いた映画。
以下は映画の最後の方のシーンである。
NYブルックリンの小さなタバコ屋のオーナー・オーギー(ハーヴェイ・カイテル)は10年以上も前から毎朝同じ時間に店の前の交差点の写真を撮り続けている。
お客の一人であるポール(ウィリアム・ハート)は作家であるが、数年前に妻を失ってから何も書くことが出来ない。
久々に依頼された仕事はクリスマスに関しての物語。だが、なかなかアイディアが浮かばない。
オーギーが「ランチを奢ってくれるなら俺の話を聞かせてやる」と言う。
オーギーは、どうやって最初のカメラを手に入れたかを語りだした。
彼がタバコ屋で仕事を始めた頃、少年が雑誌を万引きして店を出た。それを追って外へ飛び出したが、少年には逃げられてしまう。しかし、その万引き犯は自分の財布を落として行った。その財布の中をあけると、彼の運転免許証と何枚かの写真が出てきた。まだ幼い少年と母親らしき女性。その写真を見て心が和らいだ。オーギーは警察へは通告せず、その財布を保管していた。
クリスマスの夜、なぜかその財布を返しに行こうと思い立ち免許証に書かれていた住所へ行ってみた。ドアをノックすると中から80歳か90歳くらいの女性が出てきた。彼女は盲目だった。
「ロジャー?会いに来てくれたのね」孫が訪ねて来たと思ったらしい。自分はロジャーではないとは
言えなかった。おばあさんもそれに気づいたはずだ。2人は祖母と孫のふりを続け、クリスマスの夜を
祝った。
ワインを飲んだおばあさんはソファに座ったまま眠ってしまった。オーギーはトイレへ行った時、棚に未使用のカメラの箱が7〜8個あることに気づいた。その中の一台をそっと手にとり、眠っているおばあさんをそのままにしてオーギーは部屋を出た。テーブルの上に孫の財布を置いて。
その後数ヶ月が過ぎたが、どうしても気持ちが良くない。カメラを返しにおばあさんの住むアパートへ行ったが、既に彼女はそこにおらず違う人が住んでいた。
「たぶん、亡くなったんだろうな。君とふたりで過ごした夜が最後のクリスマスになったんだね」と、ポール。しばらくオーギーの顔を見つめながら、「才能あるな。面白い話にする。」と感心する。
オーギーは笑顔で言う。
「秘密を分かち合えるのが友達だろ。それができない友達なんて友達じゃない」
話を聞き終えたポールは「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」の執筆を始めた。
この物語が事実であれ、つくられたものであれ、私にとっては切なくも心があたたかくなるもの
だった。
大人のクリスマス・ストーリー。年を重ねるごとに好きになる。