近所を通る度に気になっていたが、スーパーや他のお店よりも少し割高であるし、商品を手にとり確かめることが出来ないのを理由に一度も買ったことがない八百屋さんがある。
いつも、お客さんが並んでいるお店だから商品は確かなものだと想像する。
今日もたまたまその前を通り新鮮な野菜を目にして、ふと、何か買ってみようと思った。
店頭に並んだ野菜や果物を見て、店員さんにほしい品物を伝えると手際よく袋に詰めてくれる。
「大根、ブロッコリー、3個入りのトマトを一袋下さい」
お店の男性は奥から大根を出してきて実についているふさふさの葉を切り落とし、大根の実と一緒に袋に入れた。同じ袋にブロッコリー、別の袋にトマトを入れてくれた。大根の重みでトマトが潰れないようにとの配慮だと思う。
お店の対応は素晴らしく感じが良い。
自宅へ戻りトマトを袋から出すと、1個はカタチが無骨で少し黒い斑点が気になった。
「トマトはダメかな」と思いつつ、洗った後に黒い斑点の部分を切り取って口にすると“美味しい!”
しっかりしたト・マ・ㇳの味がする。子供の頃に食べたような濃い味である。
ネットでトマトの表面にある斑点のことを調べてみた。
原因は畑にいる虫がトマトを吸う時にできた穴であり、問題なく食べられるとのこと。太陽の光を浴びて育ったトマトである証であり、無農薬や有機栽培のトマトにはよく見られる症状らしい。
ただし、病気や疫病の場合もあるとのこと。基本的にそれらが店頭に並ぶことはないが、もし売られていたとしても、トマトの病気が人体を害する心配はなく、黒い部分を取り除けば食べられるとのこと。
大根もブロッコリーも新鮮である。
今日の八百屋さんは自分たちが自信のあるものだけを店頭に出しているのだろうと思う。
NYの八百屋で山積みにされたサクランボウを選んでいた時のこと。隣にいた女性はサクランボウをわしづかみにして袋へ入れた。一粒ずつ丁寧に選別する私に、「一生そうやっているつもりか」と笑った。そう言われても私はひと粒ずつ選んだ。傷んでいる物は買いたくないのだから。
でも、スーパーで慎重に選んだ野菜が、切って見ると中が腐っていたこともある。
あんなに選んだのに傷んでいるところを見落としていたこともある。
またあの商品に触ることのできない八百屋さんで買い物をしたいと思う。