帰省するたびに寂しく思うことがある。

 

今までそこにあったものがない。

 

数年前迄は60数年前に建てられたままの古い駅だった。

エスカレーターもエレベーターも不足の少し不便な駅。けれども懐かしく落ち着いた雰囲気があった。

1階には狭いスペースに商品をたくさん積み上げたお土産店があり、手焼きせんべいのコーナーが

あり、小さなカフェがあった。それらがなくなり、現在はまだ未完成だが新しい駅となっている。

新しい駅は明るく、すっきりしている。

 

重い手荷物を持ってゆっくり降りた階段下の改札口に母が迎えに来ていた光景が浮かぶことは

もうない。

 

繁華街にあった大きめのスーパーマーケット、たぶん駅と同じ時期に建てられたもの。

食料品から雑貨、洋服まで販売していた。食品は品揃えが多く他店よりも安価だったのでよく利用

した。そのお店もなくなり現在は工事中。

 

駅前の商店が連なる一角に中学の同級生の実家が営むお店があった。

おはぎ、赤飯、切り餅、お団子、おむすびなど。丁度よい甘さのあんこが大好きだった。

昨年の11月に帰省した時には営業していたが、今はお店の外に掲げてあった大きな看板がなくなり、ネットで調べたら2022年の暮れに閉店したとのこと。

 

このお店は朝5時から営業していた。早朝の市場で働く人達が買いにくるお店なのでぐずぐずしているとほしいものが売れ切れてしまう。朝焼けを見た後に訪れ、いつもおはぎと甘いお赤飯を買い求めた。残念でならない。

 

駅近くにあったデパートもなくなり、どんどん昔の風景がなくなるのは本当に寂しい。

 

「まだ、あった!」と嬉しいお店もある。

 

高校の時に通った喫茶店、パン屋さん、お蕎麦屋さん。

 

思わず目を引く真新しい建物もある。取り壊された古い建物の跡地にできたショッピングセンター、

スーパーマーケット。展示物やライトが明るく、店内を歩くと気分が晴れる。

 

なくなったものに思い入れが強くなる。思い出が多ければ多いほど寂しい気持ちになるが、今も引き続きあるものに感謝し、新しいものにも目を向けていきたいと思う。