11月20日の月曜日、今日も故郷は朝から雨である。
毎日、雨が降ったり止んだりの繰り返し。一日中、どこへ行くにも傘を持ち歩く日々が続いている。
お昼すぎ、街中に外国人が目立つ。「お祭りも紅葉も終わったのに、どうして」と不思議に思った。
カフェへ入るとそこにも外国人の方々が、観光本を真剣に読んでいる。
「あっ、そうか!」ここでやっと気づいた。
今朝早く、友人から埠頭に入港した豪華客船の写真が送られてきたのである。
どうりでいつもは寂しさを感じるほど静かな街が、今日は外国の方を含め大勢の人が歩いている。
午後遅く、ホテルに戻り少し休んだ。
電話で話したりしているうちに外は既に暗くなってきていた。
「そうだ、豪華客船を見に行こう」埠頭はたくさんの人で賑わっているだろう。
急いで外へ出て早足で歩く。海の見える場所まであと10分というところで、汽笛が鳴った。
「あっ、出港するのかな。待って!」と勝手なことを思い走った。また汽笛が鳴った!
埠頭迄は無理、せめて海の見える場所をと息をゼイゼイしながら走り、やっとその場所に着くと、
眩しいほどのライトで輝く巨大な豪華客船が埠頭を離れてゆくのが見えた。
もっと近くへと走るが、走っても、走っても、豪華客船はどんどん遠ざかる。
意外と船のスピードは速い。テレビや映画で観るように、もっとゆっくりと去って行くものだと思っていた。
小さくなっていく黄金色の豪華客船を見送り、その残像と共に暗い道を歩いた。
「あ〜、あと10分早くホテルを出たら良かったのに〜」
なんだか取り残されたような不思議な気持ちになった。
乗船するはずだった豪華客船に置いてきぼりにされた気分であった。
トボトボ歩きながら、船旅が好きな友人夫婦を思い出した。
彼らはヨーロッパまで飛行機で行き、そこから10日から2周間のクルーズに出る。
寄港するそれぞれの街での短い観光と出会いが楽しいという。
今回寄港したのは“ダイヤモンド・プリンセス” 朝7時に入港し、午後5時に出港した。
大きな客船に乗り、少しずつ近づく街の風景、少しづつ離れていく街の風景を見るのは
どんな気持ちなのだろうか。
またひとつ夢がふえたのである。