滞在しているホテルの1階に朝7時から営業しているベーカリーがある。

ここの“ほうじ茶クロワッサン”が美味しい。

早朝の散歩をすませて丁度オープンしたばかりのそのベーカリーに立ち寄った。

 

パンを2個トレイにのせてレジにおき、ホールで忙しそうに働く若い店員さんに「お願いします」と

声をかけた。

 

店員さんは「こちらのレジでお願いします。そちら、小休止と書いてありますよね。」

 

私は気づかなかった。店員さんが立っているレジ横にはいろいろな物が置いてあり、そこを「あいているレジ」と気づかなかったのである。わざわざ、「小休止」と立て札があるレジにトレイを置いてしまった。オープン間際なので、立て札を取り忘れているのだろうなあ、と思ったのである。

 

店員さんは、わざわざ隣のその小休止と書かれた立て札を私に見せて、

「これ、読めませんか? 見えませんか?」と立て札を2度、3度と、カウンターに軽く叩きつけて

言った。

 

怒りのあまり部屋へ戻ってからお店宛に苦情のの手紙を書いた。

私は過去に一度もこんなことをしたことはない。あとで冷静になってから再度読み返して送ろうと

一旦PCを閉じた。

 

午後に友人夫婦と会い、朝の出来事を語ったのだが、私のその再現の仕方が面白可笑しいようで

大笑いになった。3人で大声を出して笑った。

 

その後に私達3人は別の友人宅へ食事に招待されて行ったのだが、そこでも朝の出来事が話題になり、今度は5人で大笑いした。

 

朝の出来事はただの笑い話になり、どうでも良くなった。

 

翌朝、駅近くに新しく出来た商業ビルの1階にあるベーカリーに寄ってみた。

朝7時半の営業に合わせて開店まもなくの来店、忙しく立ち働く店員の方々。

気持ち良いあいさつに迎えられ、パンを2個購入。ホテルへ戻りまだほんのり温かい塩パンを頬張る。

 

「塩パンってこんなに美味しかった?」と感動する。

「なに、どうなっているの?」とかじったパンの中を覗き見るほど美味しかった。

 

この感動に出会えたのも昨日の「怒らせ、笑わせてくれた店員さん」のおかげか。

昨日のことがなかったら、今日もまたホテルの下のベーカリーで焼き立てのほうじ茶クロワッサンを

食べていたと思うから。

 

小さないろいろな出来事、面白いなあと思うのである。