上野発、朝7時半の新幹線。

3人席の窓側をとったが、東京駅からすでに通路側と真ん中の席に乗客が座っている。

空いている席がたくさんあるのに、どうしてこの列だけびっしり?

 

私の場合、新幹線ではこういうことが多い。

他の列は一人ずつなのに私の列だけ満席とか。

 

でも、飛行機の場合は私のラッキー度はかなり高い。

直前に隣の席が空くことがある。12時間のフライトではとても嬉しいことである。

 

荷物を新幹線の棚に上げてから「申し訳ありません」と遠慮しつつ窓側の席につく。

お隣は80歳代後半と思われる男性とその娘さん。

 

私が席につくとすぐにテーブルを引き出してそれぞれお弁当の折をのせている。

大宮に停まる頃「食べましょうか」と小さな声で話し合いながら蓋を開けた。

そうか、8時近くと言えば、ちょうど普段の朝食時間なのか。

 

「あら、お父さん、鮭が入っているのね」「まい泉もこんなお弁当を出しているんだね」

とにかく、会話のはずむ親子で微笑ましい。それだけで「親孝行娘!」と思ってしまう。

 

「全部食べれなかったよ」「うん、大丈夫」

親が子になり、子が親になる。私のまわりでは見慣れた光景。

 

私の父は15年前に72歳で他界した。

子どもの頃から父親との会話は少なく、ふたりきりになるとお互いにぎこちない関係だった。

母が間に入って会話がつながる。

もし、父が長生きしていたら、親子の関係はお隣さんのようになっただろうか。

 

いや、いや、なっていないと思う、想像し難い。

 

私は最近買った本を一冊持ち込んだ。読みたくて買ったのに何故かページが進まない本を新幹線の中で読み切るつもりで。文字を目で追いつつ、お隣の声が聞こえてくる。

 

おふたりは仙台駅で私の方に軽く会釈をして降りられた。

 

父親と私を思い出させてくれたお隣さん。

ほとんど会話もなかったけれど、これもひとつの出逢いだと思う。