週末、20数年ぶりにその人と会った。

長い間連絡が途絶えていたのだが、今年の1月からたまにメールのやりとりをするようになった。

 

なかなか会う気がせず「会って食事をしよう」という申し出をずっと延期していたが、さすがにもう

断りきれなくなった。

 

その人が嫌いなわけではない。夏の間ずっと体調が悪かったせいもあるが、20数年ぶりに会うのは

勇気がいる。私はその頃から10キロ以上体重が増えた。そのことも原因のひとつとして自分に自信がないが故に冴えない状態が続いているのである。

 

今年から連絡をまた取り合うようになったその人は、1月から目眩があり、今も頻繁に発症する。

病院へ通っているがなかなか治らないらしい。少し心配である。それも今回会う理由のひとつで

ある。

 

その人が住む中目黒にあるレストランを予約してくれたとのこと、私の方が少し早く到着した。

数分後にやってきたその人は店内をゆっくり一度見回し、2度目に私の顔をじっくりと見て私の名を

小さな声で呼んだ。「本当か?」という調子で。

 

「やっぱりなあ・・・」と思う。「言うな、それ以上なにも・・・」と願う。

 

お互いにそれぞれの変容ぶりを確認しながら、今年の1月に亡くなった共通の友人に献杯する。

私達の本来の目的はこれだったのだろう。

 

私の知らない故人の最後の数年はとても悲しいものだったが、そのことを聞かせてもらって良かったと思う。私の知っている故人の思い出と重ね合わせ、ひとりの友人の人生をじっくりと考えるのは自分の人生を考えることにもなる。ちょっと胸が痛くなることもあるけれど。

 

1時間半くらい過ぎたところでその人は目眩がしてきたといい、また次に会う約束をして別れた。

 

1月に目眩で倒れた時に足を痛め今もゆっくり歩くその人の後ろ姿を見て、なぜだかわからないけど

会いに来て良かったと思った。