実際に起きた事件をもとに制作されたアメリカのドラマ。

 

ある日、主人公の女性が自宅へ戻りトイレへ行くと、便座が上がっている。女性ひとり暮らしの生活ではまずないこと。掃除をした時にそのままということは考えられるが。

 

女性の不在中にストーカーが忍び込んでいたのである。

 

その女性は一瞬不審に思うが「疲れているのかしら」と深く考えずに便座を下げ、通常通りの生活を

送る。その後、次々と悲惨な事件が起きる、というストーリー。

 

友人Jの母も同じように、ある日アパートへ帰ったら便座が上がっていたことがあるという。

その時、彼女は一人暮らし。息子のJはボストンの大学に通っていた。

 

トイレに立ち尽くし、しばし固まる。「私の頭はどうかしてしまったのだろうか」とモヤモヤした気持ちでキッチンへ行くと、冷蔵庫の横にあるゴミ箱に食べた覚えのない魚の燻製の空袋が入っている。

 

「私・・・食べたの?」と混乱する。それは彼女の好物であり、食べるのを楽しみにしていたものだ。

 

自分に何が起きたのか混乱するまま眠りにつき翌日からまた普通の生活を続けていたが、自分の中で

何か奇妙なことが起きているのではないか、脳に異常があるのではないかと心配になったという。

 

2週間後、ボストンに住むJがNYの母のアパートへやってきた。

久しぶりね、と言う母に息子は言った。

 

「実は2週間前に帰って来たんだよね。すぐに戻ったけど」

 

そこで母の疑問と不安は一瞬にして消え、自分がどんな思いをしたかを息子に語り、ふたりで大笑いしたというのである。

 

2週間前、Jは友達に会いにNYへやってきた。その友達とは私のことである。

私のアパートから徒歩5分の場所にJの母上は住んでいた。

 

Jと私はお昼ごはんは近所のチャイニーズレストランへ行き、夕方になりボストンへ戻る前にまた何か

食べたいとJは言った。

 

「僕の母の家へ行こう」とJに誘われて母上のアパートを訪れたのである。

 

その日、母上は留守だった。

大きな冷蔵庫には隙間がないほど食料品が詰め込まれており、これもあれもと、高級そうな魚の燻製も食べた。普段よりもずっと豪華な食事になった。

 

キッチンの洗い物をしてJはボストンへ戻って行った。アパートを出る前に彼は母親の寝室のトイレを

使ったようである。

 

私は当然Jが自分の母親に連絡をして事情を話したしたものだと思っていたが、そうではなかったのだ。余計な心配をさせてしまい気の毒なことをしたと思っている。

 

私にも「これ、私がやったの?」と混乱することがある。

どれだけ時間がたっても謎は解けないので、たぶん私がやったに違いない。

それを思うと、ちょっと自分が怖くなる。