アリスの歌の中でいちばん好きな曲は「チャンピオン」
歌詞から映画を観ているように映像が現れる。
作家・沢木耕太郎さんは、1970年代に当時現役だったボクサー・カシアス内藤さんの生活に張り
付き、練習、実際の試合、日常まで行動を共にして「一瞬の夏」(ノンフィクション)を書き上げた。
その沢木さんがアリスの谷村新司さんに内藤さんを紹介、そして「チャンピオン」が生まれた。
“老いた王者が若き挑戦者に敗れ去る”というストーリー。
「一瞬の夏」も「チャンピオン」も、心が奮い立つようなカッコよさを感じる。
谷村さんの訃報に、内藤さんは「“チャンピオン”は私にとってバイブルでした」と追悼した。
内藤さんはこの曲が発表された当初は自分がモデルだと知らなかったとのこと。「試合で負けた後、
カラオケを沢木さんとか谷村さんと行って『これ良い歌だから好きなんですよ』って言ったら
『それ君の歌だよ』って。それまではガンガン歌ってたんだよ。それっきり歌わないからね。恥ずかしくなっちゃって(笑)」と、インタビューで語っている。
自宅から徒歩10分の場所にボクシングジムがある。
谷村新司さんの訃報を知り「チャンピオン」を何度も繰り返し聞いた後、どうしても行きたくなった。
ジムはビルの1階にありガラス張り、まだ早い時間だったのでジム内には電気もついていないがドアは開け放してある。
ビルの外階段に座り真剣な眼差しで手にバンテージを巻き付けているアジア系の青年。
「チャンピオンになるぞ!」という気迫が見えたような気がした、と思い込む私である。