オノヨーコさんが子供の頃の第2次世界大戦中、田舎に疎開していた時のこと。

だんだん食べるものがなくなってきて、いつもは活発な七歳の弟さんの元気がなくなり、しょげている顔をみて、ヨーコさんは胸が痛む思いをした。

 

「ねえ、何が食べたい? いちばん食べたいものは何?」

 

現実には食べることは出来ないけれど「おいしいお献立を考えましょうよ」とゲームを提案したのだ。

「私は豚汁、ミートローフ、デザートはショートケーキ」「僕はアイスクリームの方がいいな」

笑いながら食べたいものを次々とあげていった。最後には「そんなに食べたら、おなかこわしちゃうわね」想像するだけでお腹がいっぱいになったような気がして元気になったというお話。

 

「今はもう、勇気づけのために架空のメニューなど作る必要のない時代になりました。でも精神的にはどうでしょう。みんななんとなく物足りなく、おなかに風が吹いているような、何かに飢えているような気持ちで暮らしているのではないでしょうか。週間的な生活だけでは、たまらない。何か新しい行為を人生に付け足したい。それが架空のメニューだとしても・・・そういうふうに思っているあなたのために”グレープフルーツ”を書きました」(1998年 改編版 33人の写真家とコラボレーション

”グレープフルーツジュース”の前書き)

 

本の中に「想像してごらん」(”Imagine”)で始まる詩がいくつかある。

 

ジョン・レノンさんの楽曲「イマジン」はヨーコさんの詩集「グレープフルーツ」からインスパイヤーされてつくられたものである。(2017年6月14日、全米音楽出版社協会(National Music Publishers Association、NMPA)によりオノ・ヨーコさんの名前が共作者としてクレジットされることが発表された)

 

想像は誰でも、いつでも、どこでも、自由に出来る。

 

 

今朝、異国に住む友人が泣きじゃくっている夢をみた。

その様子をみて私も涙を抑えきれずに泣いた。

 

目が覚めて、妙に生々しい。

 

「想像してごらん」と自分に語りかける。

 

「大丈夫だよ」と、彼女を抱きしめる。やがて彼女は泣き止み笑顔になる。

 

「想像してごらん」は、自分の世界を創る魔法の言葉になる。

 

 

*1964年 日本にて初版 

 1970年 加筆してアメリカにて出版