「昨日何食べた」テレビ東京公式ドラマチャンネルで再放送をしている。
今日出てきたのは「サッポロ一番 味噌ラーメン」。
塩か、味噌かで意見が分かれる。醤油はドン引きされるほど少数派らしい、何故だろう。
美容師の賢二が夜中につくって食べるのは味噌味。
わかめ、白菜、人参、ねぎ、半熟卵、隠し味におろしにんにくとバター。
それだけの材料を入れるなら、外で食べた方が楽だと思う私である。あまりインスタントラーメンを
食べることがない私は、年に何度かそれを食べる時、卵とねぎしか入れない。思い切り手を抜く。
そして、自分で作る場合はどんなラーメンでも醤油味がいちばん好きである。
それにしても、賢治がつくる味噌ラーメンの美味しそうなこと!
昨年亡くなった叔父(母の弟)は、気分屋で頑固、自分の兄弟にも煙たがられるところがある人
だった。
母が3ヶ月入院し、その後に介護施設に入所することになった時、私は半年のあいだ地元に滞在した。それまでの母の住まいの整理、施設探し、それに伴う手続き、など。初めてのこと、知らないことばかりであり、いろいろな場所へ出向いてたくさんの人に会い、その都度人に助けてもらった。
明日帰るという日の夜、母の施設からバスで市の中心街に戻り、叔父の家へ挨拶に行った。
まだ道に雪が残る空気の冷たい夜だった。
叔父夫婦の食事は既に終わり、叔母は入浴中だった。私は母の状態を説明し、それまでのお礼を伝えた。叔父が突然ソファから立ち上がり「飯、まだだろう」と台所へ向かった。「お前はよくやった!
俺がラーメンをつくってやる!」
驚いた、叔父が台所に立つなんて。
出来上がってきた味噌ラーメンには焼豚ともやしとねぎが入っていた。
熱々のラーメンは身体も心もあたためてくれた。
その後、私は友人と待ち合わせをしている場所へ向かった。
最後の夜に食事の約束をしていたのである。「俺がラーメンをつくってやる!」と立ち上がった叔父に
「いらない」とは言えなかった。
私は友人に事情を話し、飲み物とデザートだけを注文した。
あの時、「いらない」と言わなくて良かったと思っている。
不器用な叔父の気持ちが十二分に込められた、あんなに有り難い味噌ラーメンを食べることは
2度とない。