1990年代、沢木さんご自身の旅行体験をもとに書かれた紀行小説「深夜特急」を夢中になって読んだ。

その本を数人の男友達に貸すと、彼らは皆、私よりも更に夢中になった。

 

今月号の文芸誌の中に短いエッセーが掲載されていた。

 

これまでにたくさんの本を買っているが、表紙を見てどの新書店、古書店で買ったかだけでなく、

その時の自分の状況も思い出せるものが多い、と書かれている。

 

凄い記憶力だと思うし、その都度、吟味して選んでおられる姿を想像する。

また、それが作家さんなのだろうかと思うのである。

 

自分のことを考えてみた。どの本をどこで買ったか。

あろうことか、本の表紙を見て買ったことさえ覚えていないものもある。

 

ローレン・バコール「私ひとり」(By myself) 英語版 NYの古書店

20代の頃に日本語版を読み、たまたま立ち寄った古書店にとても良い状態で販売されていたのが

数年前。ちょっと電車の中でとか、待合室で読むには適さない分厚い本。内容はとても読み易い本なのだが、いまだ完読していない。

 

「ゴーン・ガール」(Gone Girl) JFK 国際空港 

映画が上映された直後、空港の日本行きのゲートで。「あまり難しいのは無理だけど、飛行機の中で

読むのはどれがいいと思う?」と若い店員さんに相談。彼女が選んでくれたのがこの本。

冒頭10ページくらいで中断している。

 

この2冊のことだけ記憶にあるのは、まだ読み終えておらずいつまでも見えるところにあるからだと

思う。

 

他の本に関しては、覚えていない。ほとんどの本は日本に一時帰国した時に大きな書店でまとめ買いをした。どうしても読みたくて買った本もあるはずなのだけど。

 

映画のことは、誰と見に行ったか、どこの劇場へ行ったか、その時の状況も覚えている。

観た映画は読んだ本よりも絶対的に少ないし、映画は日常の中の非日常だからだと思う。

 

たくさんの本が並んだ書棚の前に立ち、ふと取り出した一冊の本の表紙に当時の自分が思い浮かぶ。

貴重な思い出のアルバムのようである。