世界の駅、空港、街角にピアノを設置、弾きたい人が弾きたい曲を演奏する。
一人ひとりの簡単な自己紹介がある。
*63歳 男性 パリにて
自分を音楽の世界に誘ってくれた友人女性は病気でなくなってしまった。
彼女を思い出しながらシャンソンを弾き歌う。
彼女とふたりで歌った日々を思い出しながら。
* 母と成人した息子の親子 チェコ・プラハにて
Fly me to the moon 息子がピアノ伴奏をし、母が陽気に歌う。
母「このセッションは私達の夜の幕開けよ!」
ご機嫌な親子である。
* 若い青年 チェコ・プラハにて
3年前に、恋人を追ってウクライナからやってきた。
母国では音楽で生計を立てていたが、現在は造園でバイト。
ウクライナへは帰れない状況が続いており、国が恋しい。
家族や友を想いながらピアノを弾いていると、いつしか終電になっている。
* 赤いTシャツ 赤いバンダナの男性 チェコ・プラハにて
夜勤の仕事に向かう途中、自分の心情を綴ったオリジナル曲を演奏。
「心穏やかに 正しく 悪の誘惑に打ち勝つんだ。そうすれば新しい人生を始めることができるさ」
若い頃に傷害事件で服役し、ピアノは刑務所で覚えた。
ある日、ここでピアノを弾いていたら、突然女性が話しかけて来た。
ピアノを通じて彼女ができた。この出会いをみつけたことは最高の幸せさ。
演奏する彼の後ろに、ショートカットの素敵な女性が待っていた。
* 80歳 女性 チェコ・プラハにて
ハンガリー舞曲を演奏。
夫のアルコール依存症に悩まされ離婚、その後、障害のある娘を育て上げた。
薬局で働いて生活、ピアノを弾く時間はなかったけど、退職してから毎日練習している。
80歳だけどやりたいことがある。あちこち痛いところはあるけれど、気にしない。
演奏すると元気がでる。
* 26歳 男性 パリにて
エディット・ピアフ ”群衆” を弾く。
9歳からピアノを始めた。
学生の時にこの駅で演奏した動画がサイトにあげられ、2500万回を再生。
現在はバーやイベントで音楽活動をしている。
すべてはここから始まった。だからこの駅で演奏を続けてもっとビッグになるんだ!
* 20歳 女性 中国からの留学生 イギリス・リバプールにて
大学院への受験を控えている。
子供の頃に母の勧めでピアノを習った。「音楽家になるのではなく、いつか役に立つ時が来る。
つらい時に苦しみを和らげる」と母は言った。
16歳の時にひとりでイギリスへ渡る。母の言う通り、辛い時間をピアノが支えてくれた。
番外編
パリ地下鉄駅でキーボードを弾いて歌っていた女性。
彼女が一番印象に残ったことは、演奏後にホームレスの人がいくらかのチップとサラダをくれたこと、
と嬉しそうに笑った。
そこでピアノを弾く人達は、演奏すると心が落ち着く、癒やされる、感情を開放する、自信がつく、
嫌なことを忘れる、人との出会いをつくる、元気がでる、という。
私は彼らの演奏を聞くと、心が落ち着き、時には心躍り、想像力が豊かになり、勇気をもらい、
希望がみえてくる。
ピアノって凄いな、音楽って凄いな、人の表現力って凄いな、と思う。