知り合いの女性は小学生の頃にタップダンスを習っていた。
彼女は両親がわりと年齢が高くなってから産まれた子供。
年の離れた兄と姉がいる。
父は末っ子の彼女をとても可愛がった。「そうだ、ふたりで一緒に何かやりたいな」と思って始めた
のがタップダンスだったという。
毎週、隣町まで父とふたり電車に乗ってダンススタジオへ行く。その帰り道、いつも同じ喫茶店に立ち寄り、メニューの中からひとつ選ぶ。クリームソーダ、プリンアラモード、ホットケーキなどを食べた。それは、一緒に行ったご褒美のようなものであったらしい。
兄も姉もそのことに焼き餅をやくことはなかった。かえって、自分たちへの干渉がなくて良かったのだろう。
ステップを習得し楽しんで踊ることが出来るまでレッスンは続いたというから、父と娘の時間はそれなりに長かったのだと思う。
*タップダンスの由来:18世紀、アメリカ南部で奴隷として扱われていたアフリカ系アメリカ人が労働の後にドラムを叩いてダンスを楽しんでいた。しかし、1739年に暴動が起きたことでドラムの使用を禁止されたため、ドラムの代わりに足を踏み鳴らして音を出したのがタップダンスの始まりといわれている。タップシューズのない時代、コインや廃材を靴底につけて音がでるように工夫されていたとのこと。(ネットより)
そのお父上が90歳を超えられ、現在もたいそうお元気だという。
しかし最近、運動のやりすぎで体調を崩したとのこと。「ホント、どうしようもないわ」と笑う知人で
ある。
娘と一緒に習えるもの。他にもたくさんありそうだが、タップダンスを選んだお父上はお洒落で素敵な方なのだろうなあと想像するのである。
一般的に娘は父親に似るという。知人は背が高く足も長い、大きな二重まぶたの美人である。
きっとお父上もすらりとしたハンサムなのだと思う。
お父上にとっては幼い娘と時間を共有するための手段だったのかも知れないが、娘にとっては生涯忘れることのない”父との最高の思い出”になったらしい。