先日会った友人の指が綺麗なピンク色にマニキュアされていたのを見て、長いあいだ自分の爪に無頓着だったことに気づく。
ヨガスタジオへ通っていた頃まではペデュキュアもしていたのだけどなあ。
Zoomになってからは横着しほうだいである。
昔、炬燵に顔を伏せて寝ていた妹に悪戯でマニキュアを塗ったことがある。妹がまだ高校生の時だった。片手を塗り終えたところで「苦しい。息苦しい!」と突然起き上がった。自分の指にマニキュアが塗られていることに気づき、驚き、私は叱られた。爪も呼吸をしているのか?
実際には爪は呼吸をしないらしい。
“爪の内部には水分が貯えられており、水分があることで爪の柔軟性を保っている。爪はその水分を少しずつ爪表面から蒸発させている。マニキュアを塗ることで爪の水分が蒸発しないため、圧迫感や息苦しさを感じることがある”(ネットより)
20代の中頃、20歳ほど年上の女性上司とフロリダ州のフォートローダーデールという美しい街を訪れた。上司の恩人であるご夫妻に会いに行ったのである。ご夫妻の邸宅から1本通りを挟んでビーチが広がっていた。
そのビーチに寝転んでいる時に上司がペデュキュアをしていることに気づいた。ネイルサロンがまだ今のように一般的ではなかった時代、マニキュアもペデュキュアも自分で塗る。毎日が残業のような日々であり、また家庭のあるその上司が足のケアーまできちんとしていることに「毎日忙しいのに!どこにそんな時間が!」と、驚いた。
思わず出てしまった私のその言葉に、上司は言った。
「年をとるとね、桜貝のような綺麗な色の爪ではなくなるのよ」
その時の私は手の爪の手入れはしていたが、足は素のままだった。
それでも、彼女が言う通り、私の足の爪は桜貝色だったのである。
先輩たちの言葉がひとつひとつ理解できるようになってくる。
何気ない会話も“教え”だったのだと思うと感慨深い。
上司の恩人だというご夫妻は当時70歳代後半のアメリカ人であった。奥様は人形のように美しい。
髪の毛もマニキュア&ベディキュアも完璧である。
この奥様だったのかも知れない。
「マニキュアを塗らない手をテーブルの上に乗せてはならない」と、
とても若かった頃の上司に助言をしたというのは。
いろいろな世界があるのだなあと、つくづく思う。