1980年代中頃、初めてジェーンバーキン主演の映画を観た。
タイトルもストーリーも思い出せない。
ヨーロッパの田舎町、乾いた土地。その時のジェーンはショートカットで、少年のような身体をして
いた。ユニークな顔をした犬とにらめっこするシーンだけが記憶にある。
現在の年齢から遡れば34歳くらいだと思うのだが、もっと若く見えたのでリバイバルの映画だった
のかも知れない。
当時のある雑誌に載っていた記事である。「夫は自分の顔を好きなのだと思っていたから、寝る時にもお化粧をし、枕の下にコンパクトを置いて寝ていた」という記事は私には意外なものだった。もっと自由奔放なイメージがあったし、18歳年上のセルジュ・ゲンズブールのジェーンに対する思いれの方が強いと思っていたのだ。
それ以降、ジェーン・バーキンの映画を観ることはほとんどなかったが、頻繁にCMや写真、ファッション雑誌やインタビューで見かけていたので、70代になった彼女の映像を観ても違和感はない。
モデル、女優、歌手であるジェーン。いくつになっても変わらぬ、カジュアルでシンプル、
それがとても上品に見えるファッション、ナチュラルで洒落た髪型。
私の中では“格好いい、クールな存在”だったジェーン・バーキン。
今朝、訃報を知ってすぐに思い出したのは、あの映画のシーンである。
犬とのにらめっこ。何故、あそこだけ覚えているのだろう。
人間の記憶とは不思議なものである。
8月公開予定の「ジェーンとシャルロット」はジェーンの娘であるシャルロットが初めて監督した
ドキュメンタリー映画。
最後の出演映画になってしまったが、年齢を重ねて更に素敵なジェーンに会いに行くつもりである。
どうか安らかにおやすみください。