2022年 イタリア&ベルギー&フランスの合作映画 

イタリア出身の作家・パオロ・コニェッティの小説を映画化

 

舞台は北イタリアの小さな村 モンテローザ山麓。

 

都会育ちのピエトロ、山で生まれ育ったブルーノ、対照的なふたりの少年期から40歳前後までを描いた物語。

 

ピエトロ(11歳)の父・ジョヴァンニが趣味の登山の為に家族で休暇を過ごしていた別荘で、同年代のブルーノと出会う。それから毎年短い期間を兄弟のように過ごしていた。

 

父親との諍いを機にピエトロは別荘を訪れなくなり、ブルーノと会うこともなくなった。

ピエトロが31歳の時に父が突然亡くなり、久々に別荘を訪れる。ふたりは再会し、そこから絆が深まっていく。

 

ピエトロが村を訪れなかった長い期間、父ジョヴァンニはブルーノとふたりで山に登り、いろいろな話をして相談役にもなっていた。ある時、ジョヴァンニが買った土地にいつかブルーノが山小屋を建てることを約束する。

 

ジョヴァンニ亡き後、ふたりで山小屋を建てる。その後もブルーノは山での生活を続け、ピエトロは旅に出、旅の途中で山小屋に帰ってくる生活をする。

 

ピエトロは旅先のネパールで出会った老人に「8つの山を旅しておられるのか?」と尋ねられる。

 

“8つの山”とは。

 

ネパールの伝説によると、世界の中心には最も高い山、須弥山(スメール山、しゅみせん)があり、その周りを海、そして 8 つの山に囲まれている。「8つの山すべてに登った者と、最高峰の須弥山の頂きを極めた者と、どちらがより多くのことを学んだのだろうか」と問われる。

 

“鳥葬”

 

遺体をハゲワシに食べさせるチベットの伝統的な葬儀方法。

他の生命を食べて生きてきた人間の肉体を他の生命に還すという意味や、鳥に食べてもらうことで、天に運んでもらえるという考えがある。

 

ピエトロは山に集まった友人とブルーノに、旅で学んだそれらのことを伝え聞かせ語り合う。お互いに一番高い山にいるのがブルーノで8つの山を旅しているのがピエトロだと認める。

 

また、残忍とも思える”鳥葬”にブルーノは理解を示すのである。

 

一人ひとりの行動、考え方、言葉が、ドキュメンタリーを観ているようであった。

 

“小さな村の物語 イタリア”というTV番組がある。イタリアの小さな村に住む人たちの人生が写し出される。生まれてからずっとそこに住む人、一度都会に出て村へ戻ってきた人。

その中には、家族を養うためにやむを得ず村を離れた人もいる。

 

村から離れたことのない人も、戻ってきた人も、自分の家族と友人と村を愛している。

そして、その土地で最後を迎える。見る度に様々な人たちの人生に心を打たれ、優しい気持ちになるドキュメンタリー番組。

 

過去の放送でのこと。祖母とふたりで農業を営んでいる30代後半の男性。「夢は?」の質問に「今歩いている道を歩き続けること」と答える。

 

映画「帰れない山」は、それぞれの人生をリアルに描いた素晴らしい映画だった。

それと同じくらい予告編の最後に映し出されるこの言葉に感銘を受けた。

 

「心に降り積もった雪は溶け、人生になる」