すし店で働きながら会計を学び、趣味はラップ、賭けボクサーを仕事にする兄と同居する青年
アントワーヌが、ある日、オペラ座に寿司のデリバーに行ったことから運命が変わる。
そこで出会ったのがオペラ教師であるマリー。彼女はアントワーヌに才能を見出し、オペラ座で行っている自分のクラスに彼を招き入れる。
オペラの勉強と今までの生活の兼ね合いにストレスを感じるアントワーヌ。彼の生活環境はオペラとは縁遠いのである。仲間にもオペラを習っているとは言えない。「オペラを習う前の生活の方が気が楽だった」という彼に、アンは「お気軽に生きていて、才能が開花すると思っているの?」と厳しい言葉をかける。
葛藤しながらもオペラを続けるアントワーヌだが、兄にオペラを習っていることが知れて喧嘩になる。部屋を飛び出して行き場がなくなり途方にくれていたアントワーヌに、それまでお互いに敵対視していた裕福な家庭の同級生が手を差し伸べる。
「どうして、俺を助ける?」
「敵が飢えたら、食べ物を与えよ、って言葉があるんだよ。お互いに最高な状態で挑みたいんだ」
マリーは自身の健康に重大な問題を抱えているようだ。だからこそ、アントワーヌの才能に花を咲かせたい気持ちが強いように思える。
最後のシーン、アントワーヌが審査員の前で歌う舞台、そこに姿を見せないマリーからの手紙を
アントワーヌが受け取る。
マリーは恵まれた環境に育ったわけではなく、彼女自身もオペラとの出会いによって人生が大きく変わったのだった。自分の気持ちを飾らずに素直に書く文章がいちばん相手の心に伝わると感じさせる手紙である。
舞台でアントワーヌが歌い上げる時、スクリーンに大きく映るシャガールの天井画。「あっ!」と歓喜したが、すぐにシーンがかわるので見逃してはならない!
兄弟愛、仲間愛、師弟愛、人間愛、また、才能ある人が、あらたな才能ある人間を見つけ出して指導する使命のようなものとそこからうまれる幸福感が伝わってくる。
主人公を演じるMB14(名前の頭文字と本人の好きな数字でつけられたステージ名)はビートボクサーとして活躍、イギリスの公開オーディション番組に出演して高評価を得ている。13歳の時から俳優になりたかったといい、この映画は音楽が導いてくれた素晴らしいチャンスであり、音楽で培ったすべての経験を演技に生かせたと語っている。
(ヒューマン・ビートボックスとは、口や鼻、喉など自分の体だけで音楽を作る最も手軽な音楽表現である。演奏者はビートボクサーと呼ばれ、通常は本名ではなくステージネームで呼ばれる。ネットより)
日常に起こる偶然が運命を変えるという、夢と希望のある映画。
処々に日本というワードや日本に関連したことが出てくる。可笑しい会話や場面が多々あり、
笑いあり、感動ありでとても楽しめた!