20年ぶりに会う友と駅の改札口で待ち合わせた。

自分ではあまり変わっていないと思っていても人から見れば20年の月日は大きすぎて戸惑うと思う。

 

遠くからこちらを不安気に見ながら近づいてくるその人は、友だった。

私はマスクをせずに改札を出たところで待っていた。20年ぶりに会うのにマスクをしていたらわからないのではないかと危惧したからである。そもそも昨日は暑くて炎天下にマスクは辛い。友は電車に

乗ってきたのでマスクをつけたまま。お互いがお互いの姿を探り合いながら確認する。20年ぶりに

会うということはこういうことだ。

 

暑さで再会の感動を味合う余裕などなく、特に友は重い荷物を持ってふうふう言っている。

私へのお土産が重いのだというから「だったら私が持ちますよ」と肩にかける。こういうやりとりは

昔のままである。

 

6〜7分歩いて東京都美術館。マティス展は大盛況である。人の列に沿って歩き、展示物を観て歩く。マティス展は想像したよりも見応えがあり大満足であった。

 

ホテルへチェックインの為、公園内を歩いて外へ出る。ホテルは上野駅から徒歩2分と書かれているが、東京都美術館からは徒歩15分ほどもあろうか。タクシーに乗りたいという友。駅公園口に

タクシーは見つからず、タクシー乗り場を探している間にホテルに着くよと説得し、どうにか徒歩にて到着。

 

ホテルに荷物を置いてデパートへ。職場の人へのお土産を買いたいとのこと。

 

朝食を食べたきりランチを食べていないという友。早めの夕食にする。家では天ぷらを揚げないという友と私の意見が一致、揚げたての天ぷらをカウンターに並んで食す。

 

食後のお茶。ここでやっとお互いにマスクをはずした顔を見合わせる。

数時間並んで歩いただけで20年の月日はすっ飛び、最初は見慣れない顔を複雑な気持ちで見ていた

ものの、まったく違和感がなくなる。

 

自分のことはわかりにくいものだが、相手の変わり具合を見れば時の経過をしっかり感じる。お互いが20年という月日の長さを友を通して感じた日であり、現在の自分たちを確認しあった日である。

 

20年前の最後の日と同じように「また会おうね」と抱き合って別れた。