日曜日、上野公園の一角に献血バスが停まっていた。テントを張り、旗を掲げている。

まだ早い時間だったので献血を希望する人も、たまたま係の人も見当たらない。お天気も良いし、

そのうちに人が集まってくるのだろうか。

 

数年前、仙台へ行った時のこと。地元へ帰省していた私は朝一の新幹線で仙台へ行き、駅近くの大きな書店で本を探していた。その日の午後の新幹線で戻る予定で、既に帰りのチケットも取ってあった。

 

買い物を終えて駅ビルを出た所にある広場のような場所のベンチに座って休んでいた。帰りの新幹線の時間までまだ少し時間があった。

 

後方から若い男性の声が聞こえてくる。献血の呼びかけである。スマホを触りながらも彼の声が耳に

入ってくる。如何に必要か、なぜ必要か、切々に訴えかけるようであった。その言葉が心に響いた。

 

まもなく、私はベンチから立ち上がり彼の方へ向かって歩き、「どこへ行けば良いんですか?」と

尋ねた。人生初めての献血である。

 

献血の場所は駅の広場から歩いて数分のビルの中にあった。そこには数名の人たちが順番待ちをして

いた。

 

待っている方々があの呼びかけの声で来たのか、始めから献血目的で来ているのかはわからない。

 

ひとりの本気の呼びかけは人の心を動かすと思う、私は動かされた。