先週の派遣の仕事は規模の大きなものであった。

現場を収める責任者は朝から神経が張り詰め大きな声をあげている。派遣の人数もこれまでにない

くらい大勢いた。私はその会社の仕事は初めてであり、テンパっている責任者に名前を告げると

彼は私の仕事の持ち場まで暗記していた。派遣一人ひとりの持ち場がリストを見ずとも頭に入っているのである。驚いた。あらゆることに神経が行き渡っているようにみえる。頭のてっぺんからつま先まで緊迫感がみなぎっているのは当然である。優秀な方なのだと思う。

 

彼のアシスタントとして働いていた男性のひとりは正反対の様子であった。

「お前、今日は覚悟してやれよ!」と活を入れられ、「はい」と冷静にうなずく。

緊迫感が表情に現れないタイプである。

 

現場に緊張感は必要である。

でも、そういう人ばかりだと仕事に入る前から疲れてしまうことがある。

そういう状況の中に、アシスタントの彼のように緊張感が表面に出ない人がそばにいるとほっと

安心する。

 

長い一日を終えて現場を後にする時、朝はピリピリしていた責任者の満面の笑み。

「お疲れ様でした!」と声をかけられ、彼への緊張がとけて皆も笑顔になった。

 

 

何年も前にクリニックで仕事をしたことがある。私は極度に緊張をするタイプであり、ドクターの

アシスタントとして仕事に入る時、ガチガチに緊張して固まってしまう。

 

「力を抜け!お前が緊張すると、患者も緊張するんだ」

 

その通り!である。しかし、私にはなかなか難しいことであった。

どんなに勉強しても、何度も練習して挑んでも、緊張感は抜けなかった。

 

ドクターはいつも「仕事を楽しめ」と言う。「今日一日、楽しかったか?」と尋ねる。

勉強することが多くて、また、常に緊張状態で楽しいわけがないじゃないか、と心の中で呟いていた。

 

ドクター、他のスタッフの方々も、様々な方法で私を励まして下さった。

 

皆さまのおかげである。いま振り返ると、あの緊張感も含めて、心から楽しかったと思えるのである。