これから老人ホームへ入所する92才のマダム・マドレーヌと、人生にいくつかの問題を抱えた46才の
タクシードライバー・シャルルの物語。
予告を観て「どんなに楽しい映画なんだろう」パリ観光のつもりで映画館へ出掛けた。
乗客であるマダムをパリの反対側へ送り届けるタクシードライバーとの会話、いくつかの寄り道、そこで語られるマダムの過去。物語が進んでいくと「楽しい」ばかりの映画ではない。寄り道と共にマダムの衝撃的な人生が語られる。1950年代、60年代、女性には厳しかった時代のこと、予想を遥かに超える内容の濃い素晴らしい映画であった。
無愛想なドライバー・シャルルとの会話の中、マダム・マドレーヌの言葉。
「ひとつの怒りでひとつ老い、ひとつの笑顔でひとつ若返る
わかるでしょう、若くありたいのなら何をするべきか」
昔マドレーヌが住んでいた場所にまったく違う建物が建っている。
記憶とは異なるその建物を見つめながら昔を思い出すマドレーヌ。
「生きていくには想像力が必要ね」
”わりとクールに見えるフランス人であるが、実は情に厚い”と語る在仏経験者の方は多い。
それを物語っているシーンがあり「あっ、これだ!」と歓喜した。
いくつかの場所に寄り道してついに到着した目的地、既に夜である。老人ホームの入り口でのふたりの別れが辛い。もはや、単なるドライバーと乗客の関係ではなくなっている。
わずか半日を一緒に過ごしただけの、マドレーヌとシャルル。
シャルルがマドレーヌに心を開いていく姿がとても自然である。
マドレーヌの懐の深さなのだろうか。
常日頃、不思議に思うことがある。親しい人には言えないことが、いま会ったばかりで今後2度と会うことのない人には正直に素直に言えることがある。でも、誰でも良いというわけではない。
人生の中で何度も訪れる”一期一会” その機会が与えられたら大切にしたいと思う。
パリの風景も期待以上に美しかった!