映画“老後の資金がありません”を友人宅で観た。

この映画が公開された時、絶対に観ないと決めていた作品である。

テレビでも本でも、老後に何千万が必要とか、嫌というほど脅かされている。

こんな恐ろしいタイトルの映画など観たくないと思っていたのである。

 

成り行き上、友人宅でこの映画を観ることになった。

最初は「やっぱり、脅かしだ」と思っていたが、最後迄観ると

この映画はそれほど恐ろしいものではなかった。

逆に気が楽になる人も多いと思う。

 

いくつかの“出来事”には、そんなにうまくいくわけがないとツッコミを入れたくなるが、

そこまで意固地になって観る映画ではない。コメディーである。

 

ストーリーの始めに、主演の天海祐希扮する主婦が店頭に飾られている商品を

あこがれの目でじっと見ている。「ほしいなあ。でも、無理」と、その場を離れる。

 

映画の終盤で、彼女はそれを手にし、弾むような気分で外を歩く。

 

その姿を見て爽快な気持ちになった。

わたしがこの映画の中でいちばん好きなシーンである。

 

当初、私はこの映画をタイトルだけで拒絶した。

それは老後に不安があるからだろう。

この映画は観客動員数100万人を超える大ヒット作である。

老後に不安のない人が見たのか、不安のある人がみたのか知らないが

多くの人が興味をもったということである。

 

タイトルに対するイメージの持ち方は人それぞれであるが、

私は自分の不安に的中したので拒絶した。

 

でも、この映画のタイトルが「老後の資金があります」だったら

拒否反応は更に大きかったと思う。

 

人間の心理とは複雑である。