北海道に学校視察に行って参りました。
 


今回の視察は、中学・高校の一貫教育の取組で全国でも注目されている学校である温泉地としても有名な『北海道立登別明日中等教育学校』、そして北海道の農業高校の拠点校として、十勝平野の自然に恵まれた広大な大地で、ユニークで実践的な農業教育に取組む『北海道立帯広農業高校』、鹿追町の山村留学を長年に渡り推進ししてこられている『鹿追町教育員会』と『鹿追町自然留学センター』『鹿追町立瓜幕(うりまく)小学校』、そして北海道十勝の歴史と共に守られてきた世界で唯一存在する帯広の『ばんえい競馬』とばんえい競馬では初の女性調教師谷あゆみさん』にインタビューをして参りました。  

今回の視察の焦点★
 

日本の教育は、戦後の高度経済成長の中で勤勉で賢い社会人を作るために、少しでもいい高校、大学に進学・卒業し、大企業に入社することが『人生の成功』とする傾向にありました。しかし、これからの日本は、大企業で終身雇用の座につき、老後は年金生活で楽しく暮らすという画一的__な人生図が必ずしも幸せを意味するものではない!という時代になってきているのは誰もが感じているところだと思います。

このような時代の移り変わりの中で、どう生きるのが幸せで、どんな教育を受けるのが正しいのかということは、簡単には明言できないのが実情ですが、これからの日本の姿である少子高齢化社会の中では、みんなが同じ方向に向かうのではなく、多様な選択肢の中から個々の能力を一番発揮できる方向に進めるような教育を受けることができるようにすることが、大きな課題のひとつなのではないかと思います。

今回の視察では、今の日本の教育において個々の個性を伸ばし、幅広い選択肢の中から専門的な知識を身につける教育を実践されている素晴らしい学校を選んでお話を伺ってきました。
 

それぞれの概要は以下の通りです。 

北海道登別明日中等教育学校
 

(校長先生のお話)
 

★歴史

●平成11年に文科省施策が発表された。 

● 
平成12年 それを受け、道の教育委員会で中高一貫教育校を作る話になった。 

●4校が手を挙げたが、登別が一番反対が少なかった。また、市でも援助をしている事も採用する理由であった。地域一帯で協力し、基金を作って開校当初200万円を寄付していただいた。
 

●平成16年工事始まり、19年4月開校。 

●制服等まで、地域の方にアンケートを取ったり、地域のコンセンサスを得る努力をした。
 

★教員の面接は、開校前は道の教育委員会で面接を行った。
  

★試行錯誤をしながらやっと6年目を迎えた。やっと中学から入った一回生が卒業を迎えるが、まだ不確定な要素も多い。一期生は勢いで進路も実現されているが、二期生、三期生がうまくいかないケースも他校で報告されている。
 

★中学から入ってきた生徒と、高校から入ってきた生徒と学力の幅があり、進路指導も試行錯誤である。
 

★中高一貫教育の、一体型である。
メージ的には小学校の6年がもう一回あるようなものである。(佐賀県は併設型、道内は連携型がほとんど・・たとえば、上川中学を出た生徒が全て上川高校に行くわけではない) 

6年を三つに分けて、1・2回生、3・4回生、5・6回生という一体的な体制をとっている。
 

★学校目標は「明日を創る」学校の名前に重なる部分でもある。
 

6年間在籍するので、英語・数学などは基礎から徹底的に習得させる。中一の時点で宿題が多く、寝るのが午前1時になってしまう事もある。しかしそのうち体制に慣れる。英語などは少人数体制で、クラスを二つに分けている。中一の英語では男女別に分けている。男女別の方が定着しやすいという報告がある。まだ始めて一カ月しか経っていないが、数か月で成果が出てくると思われる。(異性を意識しはじめる年齢なので、分けた方が発言が多くなる。)
 

★数学は先生が最低ふたり入ってティームティーチングを行っている。
習熟度別学習を行っている。テストごとにクラスが変わることもある。 

イマージョンプログラム、すなわち英語以外の教科も英語で行う事を行っている。しかし全ての教師が話せるわけではないので、一時間のうち、少しの時間、単語でも良いので英語を交える、という教師もいる。カナダでできたプログラムである。
総合学習の時間などはALTを活用し、プログラムを組んで数時間英語のみという取り組みをしている。 

★(録画ビデオ)イマージョンプログラムの一例:

家庭科を英語で教えてる光景を観せていただいた。

教師は英語も出来て、中高の免許も持っている人材を開校当初探した。

★「日本に来て驚いたことは何ですか」などの質問を日本語から英語に訳する授業=社会科
 

★中国語、ハングル語、パソコン教室では予備校の講座も受けられる。

ALTは常駐1名、他1名で英検の指導も行う。北海道では、ALTが授業をするのはまだない。
 

★4回生になると、近くの小学校に英語を教えに行く。3年目になる。小学校と連携し、生徒が教員のように指導する内容を小学校の先生と打ち合わせをし、作成する。
 

★5回生ではアメリカ・カナダでの見学旅行を実施している。(シアトルの学校で4泊5日、ホームステイをし交流する)
 

★異年齢交流、文化祭も6学年が全て集まって行う。体育祭も1回生から6回生まで全て集まって行う。遠足は、中一と高一、中二と高二とペアを組んで行う。
 

PTAの活動が非常に活発で、文化祭も何百人と来る。手伝いも人が余る位である。
 

1学年2クラス、80である。

1年~6年までの生徒数は470名 

★学習以外のものを触れる企画も盛りだくさん

●オペラ歌手招待

●ライオンキングをバス貸切で観に行った

●地域を知るような学習、朝学習の実施(MS)放課後の学習 


★他特色

●中三で大学訪問をする

受験がない分早めに進路を考えてもらいたい。


●4
回生はインターンシップ(職業)体験がある(一日のみ、札幌市内。証券会社、野村総研、北大など)


●5・6回生 卒業研究開始、発表がある。生徒が一人一つテーマを決めて、二年間研究して発表する。
 


寄宿舎(あけび館) 

●1学年につき男女各8名、計16名を受け入れ。

1~6学年全員で96名を受け入れ。

●(寮は開校時に出来た)建設費用40億円。

●6年間一緒なので、非常に仲が良い。

しかしながらホームシックにかかり、親元に帰るケースもある。

●脱落したのは数年で2,3名程度であった。

●学習室などもある。

●クリスマスパーティー、お誕生日会を行う。

●生徒がさびしくならないようたくさんのイベントを企画する。

●一番遠い子は稚内から来ている。

寮は三食付(学校で食べるお弁当も持たせてくれる)

みんな仲良し。いじめなどの問題はない。 

★入試はしない。面接、グループワークでコミュニケーション能力、積極性などを判断する。
 

 
登別高校を廃校にしてその跡地に校舎を建てた。 

★オール木造、全て北海道製。(木の香りが心地いい~)
 

★職員室は中高一体化している。
 

★あたたかみのある廊下・・ゆとりのあるスペースを設け、話せるスペースにしている。
 

 
昼食はどこで食べても良い。(大学のキャンパスみたい。) 

★寮の子達は、週末は自宅に帰る。親御さんが迎えに来ることもあり、自分で帰る事もある。
 


★マイナスの面は?

・6年制なので、中だるみが起きやすい

・学校の中で行事等をどんどん作っていかないとだれてしまう

・防止策として、英検等、短期的目標を作って取り組ませている。他校も同じ悩みを持っているようだ。 

★入学時は大人数での生活、寄宿舎暮らしでストレスがある。


スクールカウンセラーを月二回のタイミングで呼び、夜にアクティビティをしてもらっている。自分の気持ちをどうすれば相手に伝えられるか、どうすれば自分でかかえこまないか、等が出来るようにアドバイスしてもらっている。


 

  いじめの問題は殆どない。


いじめのない原因のひとつとして、入学選考は、グループ活動を行わせ、コミュニケーションが良くできる子を入れるようにしている。結果、良い子が入ってくる


★面接の内容:

●中学に入りたい動機、入って何をしたいか、等聞いている。

●周辺には、明日中等の面接対策のための塾まであるようだ。


★学習能力をみる試験をしないので、学力はどうしても開きが出てしまう。


★入学者は特徴として、女子が多い今年始めて半々になった。小6では女子の方がしっかりしており、コミュニケーションが得意な事が原因である。


クラブ活動は、9割が入っている

●クラブ活動の種類が多い。

 ●小さい時から習っているものを選ぶ場合が多いので、秀でている。

●6年間(5年半)打ち込めるので、全国大会に出場し始めた。

●辞める生徒はあまりいない。

●文化系と体育系のクラブを同時に入る生徒もいる。



カナダへの旅行は20万円程度、補助はない。

保護者からの反対はない。


★生徒の希望進路は・・・6年間かけてじっくり将来の設計図を考えてもらうよう指導している。国連、絵本作家、消防士、芸術家など多彩である。


 
保護者は、「学校を皆でつくっていこう」という気風がある。



★学校の財政は苦しい・・・

 
明日中等教育学校の広々とした木の廊下に木のベンチとテラス

yk