続いて・・・

愛知県図書館の果たす役割について


 

 周知の通り、ここ20年くらいの間に日本のみならず、世界中で、携帯電話やインターネット、タブレット端末の普及で、あらゆる情報をいつでもどこでも簡単に入手でき、電子書籍などでも本が読める時代になり、社会全体として本離れの傾向にあります。

 芸術や文化に触れる機会も少なくなってきています。そんな時代だからこそ、行政が、知恵を絞って、新たな試みに骨を折るときなのではないでしょうか。

 まず始めに取組めることとして考えられるのは、誰もが無料で利用できる公共施設である図書館を起爆剤としてうまく活用することです。これにより行政サービス全体の活性化、地域に根ざした文化を新たに作り出していくことが期待できると思います。


 

では、愛知県の図書館の利用のされ方はどうなっているのでしょうか?

 県内の団体職員さんを始め、ビジネスマンやOL、主婦、そして学生など、あらゆる層の方々に聞いてみました。

 40歳以上の殆どの人は、県図書館が栄にあった時代に、勉強をしに何回か行ったことがあったかもしれないが、21年前の平成3年に丸の内に移転してからは一度も利用したことがない、という答えが殆どでした。30才代以下の若い世代は、利用するという以前に、県図書館がどこにあるのか分からない、あるいは、県図書館の存在すら知らなかったという人もたくさんいました。

 予想はしていたものの、愛知県図書館がこれほど、市民県民の生活とは遠いところに存在していたのだということに衝撃を受けました。

 理由として考えられるのは、施設の利便性。まずは『場所』。中区丸の内の一等地に、立派にたたずむ5階建の素晴らしい施設ですが、丸の内駅からは徒歩十数分もかかってしまい、周りに立ち寄る楽しい施設もありません。

 次に『駐車場』。スペースは23台分ありますが、すぐに埋まってしまうので、車で行くと駐車場の心配がまず付いてきます。近くにはコインパーキングもないので、駐車場の空きがなければ、ずっとぐるぐる建物の周りをさまよい走り続けるか、かなり遠くのコインパーキングに停めて、30分以上も歩くといったことしかありません。7百万人余りの県民が日常生活で気軽に利用する施設としては、あまりにも使い勝手が悪いと言わざるを得ません。

 図書館内の原因として考えられるのは、やはり幅広い趣味の雑誌音楽CD,映画DVDなどの品揃えの少なさと、ゆっくりと楽しめる滞在型の図書館になっていないという点が、人々の足が県図書館に向かない理由になっているのではないかと思われます。

 21年前に栄の愛知芸術文化センターでは手狭になったということから、現在の場所に新しく図書館を建設し、移転したということなのですが、そもそもどうしてこんなに利用しにくい場所に移転したのかという疑問も残ります。しかしそう簡単に場所を移転することはできないと思いますので、現時点ですぐにでもできることと、1年後、3年後、5年後にならできることなどと、目標を決めて、しっかりと行動に移していくことが大切なことだと思います。

 まず、県図書館の利用を拡大するためには、わざわざ遠くからでも、県図書館に行きたい!と思うような魅力ある施設に変えなくてはならないということです。

 図書館は老若男女を問わず、誰もが気軽に立ち寄れる一番敷居の低い公共施設なのですから、『本を貸し出し、静かに読書、勉強』という従来の堅いイメージを払拭し、もっと娯楽性も兼ね備えた楽しい施設に変えていかなければこのまま衰退しかねません。

 残念ながら、現在の県図書館はイベント的なこともやってはいるようですが、イベントの打ち出し方も非常に消極的で、話題になるようなものはなく、ごく一部の本好きな人が参加するものでしかないのが実情です。

あらゆる年齢層の多くの人が、もっと足を運びたくなるような楽しいイベントや展示会をどんどん頻繁に行っていかなければ、利用者拡大には到底つながらないと思います。

 利用者目線で言うならば、県図書館に行けばいつでも何かやってる!あるいは、ゆっくりと楽しく滞在できる人との出会いがある、というような雰囲気がない限り、わざわざ本を借りに立ち寄るということはない、というのが現実だと思います。 
 

 ではここで、私が視察した図書館の中で積極的に利用者が楽しめる施設を目指して頑張っている図書館を、いくつかご紹介したいと思います。

 まずは奈良県立図書情報館。奈良県は人口わずか139万人というサイズなのに、その5倍7百万人以上の人口を持つ愛知県図書館の利用者数とそう大して変わらないくらい利用者が多いのです

 この奈良県立図書情報館は、平成17年に、これからの時代を見据えた新たな図書館の構想を打ち出し、多くの県民があらゆる情報入手の拠点として利用できるように、という思いを込めて、県立図書情報館という名前で再スタートしました。

 広々としたスタイリッシュな館内は、誰もが自由に使えるインターネットに接続されたコンピュータが80台も設置され、雑誌も数多く取り揃えられており、閲覧スペースも明るく自由な感じで、大勢の人がそれぞれに楽しそうに利用しておりました。

 1階にも軽い食事とドリンク類が楽しめるカフェがあり、ゆっくりと滞在できるようになっていました。

 そして何よりも素晴しいと思ったのは、イベントなどの企画力でした。

 図書館の入り口を入ったすぐのオープンスペースでは、数々のイベントが、日替わりで次々に開催されているということですが、私が図書館に訪れたときには、知的書評合戦、『ビブリオバトル』というイベントが開催されていました。この「ビルリオバトル」というイベントは、参加者が一人ずつ5分間で自分のお奨めの本を紹介して、会場にいる人たちがどの本が一番読みたくなったかを投票し、一番投票数が多かった本、「チャンプ本」を決めるというもので、3年ほど前に京都大学の学生から発祥し、瞬く間に全国に広まり、現在若者を中心に幅広い層で人気があるイベントです。私も参加させていただき、初めて経験いたしましたが、とても楽しかったです。

その他、クラシックコンサートや、落語、ファッションショー、お茶会、浴衣で参加するイベント、奈良女子大のインターンが企画する『ゆるキャラバトル』など、イベントを会議室で行うのではなく、館内の一番目立つ玄関口にあるオープンスペースで行ってしまう、という斬新なアイディアに、私は感動しました。


 

 続いて福岡市総合図書館にも行って参りましたが、ここは最寄駅から歩いて156分かかってしまうにもかかわらず、非常に大勢の市民に利用されており、平成23年度の個人貸出し利用者数は、436000で、愛知県の16万9千人2.5倍以上にも上ります。ちなみに福岡市の人口はわずか149万人余りということを考えると、愛知県は200万人以上の利用者数がなくては、福岡市と肩を並べることはできない、ということです。

 福岡総合図書館は、映画のフィルムの保管数はアジア1ということで、エアコンで管理された大きなフィルム保管室が完備されており、常設のミニシアターでは、フィルムの上映が常に行われているということでした。

 そして、カフェも1階に併設されており、また、自動販売機のあるスペースには、テーブルや椅子が沢山おいてあるので、そこでお弁当やスナックも食べられるようになっていました。 
 

それからもうひとつ忘れてならないのは、先ほどもFacebookの質問でご紹介した武雄市ですが、この武雄市が今度は、全国初!という画期的な構想を持つ新しい図書館を来年4月にオープンさせるということです。

 新しい構想は、レンタルビデオ店でお馴染みのTSUTAYAを展開する『カルチュア・コンビニエンス・クラブ』を指定管理者として随意契約を結び、図書館の運営管理を委託します。館内ではスターバックスを併設させ、ゆっくりとコーヒーを飲みながら、本の閲覧を楽しむことがでるという、これまでとはまったく違ったスタイルの図書館が生まれることになります。

 年中無休で開館時間も延長し、午前9時から午後9時となり、利用者はTSUTAYAの共通ポイントカード『Tカード』で書籍を借りることができ、TSUTAYA郵送返却サービスを使って、日本全国どこの都道府県からの観光客もTカードで本を借りることができ、帰りの飛行機の中で借りた本を読んで、家に帰ってからわずか100円の郵送料で返却できるという、画期的なシステムも導入するということです。

 武雄市のような新たな試みは、全国の公共図書館の役割を考え直すという点でも、また行政の公共サービスそのもののあり方を考え直すという点でも、非常に大きな意味を持つものだと私は考えます。

 このように、地方の図書館でもそれぞれ、積極的に新たな取組みに挑戦している中、愛知県図書館も今の状態に安住しているのではなく、どうにか知恵を絞ってもっと広く県民が楽しく利用できるような試みをするべきだと私は強く思います。

 

さて、ここで3お伺いをしたいと思います。

 まず1点目▶ 愛知県図書館の果たす役割として、どのような姿を目指し、取組んでおられるのかお聞かせください。


 

 2点目▶ 今後、より多くの多くの来館者に来ていただくために、1階フロアにカフェなどを導入したり、ビブリオバトルのような、若者の間でも全国的に人気の楽しいイベントをもっと積極的に頻繁に行い、情報発信の色々なツールを効果的に使って、どんどん情報発信していくべきだと考えますが、どのようにお考えでしょうか? 

Ss 3点目▶愛知県図書館の利用者の居住地比率をみると、約90%が名古屋市内とその近郊に住んでいるということなので、県図書館で借りた本を名古屋市内、またその近郊のどの図書館でも返却できるようにすれば、返却のためだけに県図書館に行く必要もなくなり、利用者にとっては非常に便利で、画期的なサービスになると思います。

 名古屋市やその周辺市町村の図書館とも連携して、相互返却の仕組みをぜひ導入していただきたいと思いますが、どのようにお考えでしょうか?

                               

 これを持ちまして、私の壇上からの質問を終えたいとおもいます。

各部局の前向きなご答弁をきたいしております。

 ご清聴ありがとうございました。