私は、出雲のお土産を手に実家へと、母の様子を窺いに行きました。
母は、昨年末の肺腺癌ステージⅣの宣告から、抗がん剤を服用し始めて半年が経ちました。
治療が始まると、心身共に衰弱していた母の容態は、抗がん剤の副作用もなく、みるみる良くなって行きました。
レントゲンの写真を見せて貰うと、水はまだ少し溜まっていましたが、あきらかに腫瘍の影が薄くなってきているのです。
月に一度だった検診も2か月に一度になり、病院も母は一人で通えるようになったので、家族の負担も有りません。
食欲は発病前より落ちましたが、年齢の割には食べ過ぎで太り過ぎていたので、今の方がかえって健康的かも知れません![]()
そして、数か月前の重たいエネルギーが嘘のように、とにかく、よく喋り、良く笑い、母自体が‟大きな明るいエネルギーの塊”のようになっていました。
そして、見慣れない‟カセットデッキ”が置いてあったので、それは何?と尋ねると、母は笑いながら‟講談を始めた”と言うのです。
私は目を丸くして、「え
講談
講談って、あのベンベンっ
て台を叩いて喋るやつ
」と、驚いて聞き返しました![]()
昔から芸事が好きで、詩吟や舞なども嗜む母ですが、まさか講談とは![]()
想像の斜め上を行く母の選択には脱帽いたしました![]()
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どうして講談を選んだのかと聞くと、
「今、娘の夫2人が、全然知らん新しい道に踏み出して頑張ろうとしてるやん![]()
(義理の)息子2人がそうして頑張ってんのに、私もなんかやらんと~
と思ってん
ほんで、ゆくゆくは古事記の講談やりたいねん、まずはスサノオさんのヤマタノオロチ退治のお話を講談の脚本に変えて…」
と、キラキラした表情で夢をいっぱいに語ってくれました![]()
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高齢女性の、しかも末期癌患者の講談師ですよ![]()
私は、‟それが実現出来たら、お母さんに勇気づけられる人が沢山居るね”と言って、母の新しい夢を喜び、その勇気と行動力を称えました![]()
ほんとに、母のそんな元気な様子を見ていると、このまま癌が消えてなくなってくれるような気も致しますが、、、
しかし、‟今後、母の癌が消滅する事はない” のだそうです。
今は抗がん剤が体に良く合っていて、‟癌を抑え込んでいる状態”であり、何かの拍子にそれが‟暴れ出す”事もあるそうです。
でも、母の‟前向きな生きる力は間違いなく、その進行を阻んでいるので、これからも好きな事をして楽しんでください。”と、母が主治医の先生から、そう直接伝えられたそうです。
‟癌と共に生きて行く”
それは、今の母に与えられた厳しい宿題。
しかし、人生経験を積み重ねた母に用意された、今の母なら‟乗り越えられる”であろう神様の宿題です。
末期癌を告知され、死と向き合ってその苦しみを経験した母は、病気の人の痛みや苦しみをより深く理解出来るようになったと言います。
そして、身体が楽になったことや、今ある環境について、ことある毎に‟有難い有難い”と言っています。
‟苦しみを知る” という事は、ごく普通のありふれた日常が、いかほど愛しいものであるかに気がつき、今置かれている自身の環境への感謝や、他者を思いやる気持ちが大きく育つことに繋がるのです。
母は、これから先、その胸の中に、常に癌を抱えて生きて行きます。
でも、それは決して不幸な事や、神様からの罰ではありません。
肺癌発覚後、母の胸の中の‟怒りの塊”そのものだったそれは、今は‟愛を育む種”に変化して、感謝の心を育んでいるのだなぁと、私は母を見ているとそう思えるのです。
一方、夫が神職になる為の階位検定講習会が無事に始まりました。
その日経験したことを、毎晩のようにビデオ通話で報告してくれます![]()
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私も知らないような、習いたての祭礼の用語をバンバン使いこなし、「今日もしんどかったぁ![]()
」と言いながらも、時々習った所作なども交えておどけたりして、どこかとても楽しそうなのです。
同期の受講生は若い方から年配の方まで年齢層も幅広く、やはり社家の親族が多いようですが、現職は皆バラバラで、個性に富んだ皆さんからは、色んな刺激を受けている様でした。
講師にあたる先生方は、普段は皆、どこかの神社の神職として奉務されているようで、厳しくも温かく指導して下さるとの事で、話を聞いているとその先生方の神社への熱い思いが伝わって来るのだとも聞きました![]()
そして、毎日朝から夕方までのスケジュールをこなし、帰宅後はレポートやテストの勉強など、とにかくゆっくりする暇もない様子でした。
しかし、心配していた長時間の正座も、なんとか耐えている様子でしたし、体の不調も無く無事に通う事が出来ているようで安心しました![]()
(出雲の神様と、先生方、同期の皆様、関わって下さった皆様に感謝です
)
夫が前期の約2週間の講義が終わり、2日間の中休みを頂けると連絡してくれた時、私は‟ここまでよく頑張ったね、有難うね
”と心から感謝を伝えました。
そしてその日の夕方、夫のウィークリーマンションの近くから‟虹が出た”と言ってLINEで写真を送ってくれました![]()
夕焼けに染まる大きなダブルレインボー![]()
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神様もきっと、‟よく頑張ったね”と言って下さっているように感じました![]()
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9月に入り、夫の講習会は修了です。
かと言って、明日からすぐ神職に就ける訳ではありませんが、50半ばでの新たな門出は大いに喜ばしい事です![]()
4月に突然の職場解雇になり、夫は悔しい思いを経験致しましたが、私は‟物事の終わりは始まりの合図”だと思っています。
この一年、私達の家族に、人生の転機が痛みを伴い、雪崩のように起こっていますが、時にはその不安に押しつぶされそうになりながらも、一族の皆がお互いを思い合い、支え合い、前向きに進んで来れたことは、何よりもかけがえのない宝物のような経験です![]()
一連の経験を頂けた事は、結果的に家族ひとりひとりの‟魂の成長”に繋がりました![]()
祈願した神社の神々も、願いを叶えて下さったので、またいつかお礼の巡拝に出向きます![]()
これからも、難しい宿題が降りかかることだろうと思いますが、この宝物を胸に前を向いて皆で歩んで行ければと思います![]()
明日は出雲へ、夫を迎えに行って美味しい食事で乾杯し、その労をねぎらいたいと思います![]()
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そして、出雲大社の神様に無事に終了出来た事のご報告とお礼参りをして来ます![]()
ー完ー
皆様へ![]()
1年という長い間、お休みしていたにもかかわらず、また再びお付き合い下さいまして誠に有難うございます![]()
今後の展開は未定なのですが、おそらくかなり不定期な投稿になるかと思います![]()
ふら~っと戻ってくる事も有りそうですが、、![]()
その時、まだ覚えていて下さっていたら、またお付き合い下さると幸いです![]()
コチラも是非![]()


















