Xデーがやって来た。


これまで反ワクチン派だった私も、世の中の流れに負けて、両親も説得しきれず、ついに接種を決意した。


こんなに人口がいたのかと思うほど、接種会場にはワクチンを求めた住民達が朝から続々と蟻のように列を成して、椅子取りゲームかのようにパイプ椅子を移動する。


予診の際に医者から「これまで注射を打って倒れたことはあるか?」と聞かれ、「そういえば先日健康診断(正確には子宮系検診)の採血で貧血になった」とうっかり発言してしまったところ、接種会場の別室に連れて行かれ、仰向けで打った方が安全という判断のもと、看護師さん付きっきりでベッドの上で30分ほど休ませてもらうという、謎のVIP待遇を受けた。


副反応はなし。やっぱり薬も注射も嫌いだ。




正直ワクチンを接種した今でも、この風潮に抵抗や不信感はある。


ここ数年、コロナどころか風邪もインフルエンザにもかかって来なかった健康体の自分が何故、得体の知れない液体(ファイザーはギリギリFDA承認されたが)を身体に注入しなくてはならないのか?

過去を振り返れば、何度も高熱に冒された同居人たちを横目に看病(同情)しながら、私だけはピンピンしていた。それくらい抵抗力が強いという自負がある。


ところが、やっぱり人間は一人では生きていけないのだ。一生一人暮らし、もしくは無人島で暮らすならともかく、少なくとも誰かと接触して共存しているのだ。

ワクチンひとつで大切な誰かの安心を買うことができるなら、もう打つ以外ほかならないという考えに至った。


ワクチン接種をした日、孫が出来たわけでもないのに、肩の荷が降りたように安堵した両親の顔を見ると、ある種の親孝行をした気分にさえなる。これでようやく2年越しに祖父母にも会いに行けるのかと思うと、この決断は間違っていなかったのかなと思える。


我々は人間モルモットだ。

これで私が将来不妊になったら、ワクチンのせいにしてやるんだから!