特養の入所前の面談で、ご家族から一番よく聞くセリフがある。
「うちの親、出されたものは何でも食べますから」
これ、現場の人間からすると9割くらい疑って聞いている。
何十年も生きてきて、好き嫌いやこだわりの一つもない人間なんていない。
ましてや環境がガラッと変わる施設生活。
最初のうちは緊張して食べていても、だんだん「これ嫌い」「硬い」「味がない」と必ず本性が出てくる。
後から急に言われるより、最初からある程度の「ワガママ」は提示しておいてくれた方が、こっちとしても対策が打ちやすいのだ。
今日は特養の厨房の裏側から、家族向けに「食事の上手な希望の出し方」をこっそりレクチャーしようと思う。
①主食は意外と自由に変えられる 施設のご飯は基本的に「毎食ご飯(お米)」がベースになっている。
でも「朝はどうしてもパンじゃないと喉を通らない」という人は一定数いる。
そういう時は、遠慮せずに「朝はパン食でお願いします」と言ってほしい。
施設にもよるけれど、主食の変更は意外と柔軟に対応できるところが多い。
朝をパンに変えたり、どうしてもご飯が嫌ならお粥にしたり。
「わがまま言ったら嫌がられるかも」と遠慮して残飯を山盛りにされるより、確実に食べてくれるものを出せた方が、私たちの精神衛生上も圧倒的に良い。
②持ち込みは「使い切り・個包装」が最強
特養の食事は塩分やカロリーが計算されている。
健康的なのは間違いないけれど、毎日食べていればジャンクな味や濃い味が恋しくなるのは当然だ。
だから、ご家族からの差し入れや持ち込みは、基本的には本人の楽しみとして歓迎したい。
ここで問題になるのが「何を持ち込むか」だ。
一番困るのが、タッパーにぎっしり詰まった手作りの煮物。
それから、段ボール箱で買ってきたみかんやバナナ。
気持ちは痛いほどわかる。
お袋の味を食べさせたいとか、好きなものをたくさん置いておいてあげたいとか。
でも、これらは衛生管理の観点からNGを出さざるを得ないことが多い。
万が一食中毒が起きた時、手作りの持ち込み品が原因でも施設の責任問題になりかねないからだ。
大量の果物も、部屋で腐らせてコバエが湧く原因になる。
現場が一番ありがたくて、絶対に入所者も喜ぶ差し入れの正解を教えよう。
「その日のうちに食べきれる、市販の個包装のもの」だ。
面会に来た時に持ってくる、コンビニのプリン1個。
ショートケーキ1個。
小袋のクッキー。
「今日のおやつに一緒に食べようね」
とその場で開けて食べ切るのが、一番安全で誰も嫌な顔をしない完璧なホスピタリティだ。
特養は刑務所じゃない。
生活の場だ。
集団生活のルールという大きな枠はあるけれど、その隙間でいかに「個人の楽しみ」をねじ込むかが、特養生活の質を決める。
遠慮美徳の精神は一旦捨てて、入所時の面談では「うちの親の譲れないポイント」を堂々とプレゼンしてほしい。
私たち管理栄養士は、そのワガママをどうやって安全に着地させるかを考えるのが仕事なのだから。
短歌:何でもと遠慮するなよ最初から朝はパン派と胸を張れ
#特養 #管理栄養士 #特養入所 #介護の裏側 #施設のご飯 #差し入れの注意点 #家族の悩み #食事介助 #高齢者の食事