3月10日。

 

砂糖の日。 

 

特養の食事において、砂糖は麻薬みたいなものだ。

 

 薄味の健康的なメニューを出しても、結局みんなが一番喜ぶのは甘辛い味付けの時だ。 

 

煮物も、酢の物も、ちょっと砂糖を多めに入れるだけで残飯の量が劇的に減る。

 

 栄養学の正しさと、現場の「食べてナンボ」の現実がいつもぶつかり合う。

 

「今日の肉じゃが、ちょっと甘い?」

 

 検食のノートに書かれた文字を見て舌打ちをする。

 

 意図的に甘くしてるんだよ、とノートの端に赤ペンで殴り書きしたくなる衝動を抑える。 

 

食べ残して痩せていくくらいなら、カロリー摂って太ったほうがマシだ。

 

 病院勤務時代はガチガチの制限食を作っていた私からすれば、特養の食事は「生活の楽しみ」に全振りしている。

 

休憩室で缶コーヒーの微糖を開ける。

 

 微糖と言いながらしっかり甘い。 

 

この白くて甘い粉に、人間は一生支配され続けるんだろうな。 

 

疲れた脳に糖分が染み渡るのを感じながら、午後の発注作業に戻る。

 

短歌:正しさを捨てて甘さを足す鍋に残飯減りてため息ひとつ

 

#特養 #管理栄養士 #砂糖の日 #肉じゃが #味付けの葛藤 #検食 #火曜日の午後