世界観episode55~3月31日就職の前日と家族でのお花見(HSP社会人前日譚⑤)

 

 

  前回は、

  4月1日の就職の前に

  社会復帰の練習ということで、

  単発アルバイトを

  したときのことを

  お話ししました。 

 

 

   世界観episode54~社会復帰練習・単発アルバイト(後編)(HSP社会人前日譚④)

  

 

  今回は、

  3月31日、

  就職の前日のことを

  お話しします。

 

  なぜこの日のことを

  お話しするかというと、

  この日の私は

  これから先のことについて

  明るい気持ちで

  希望に満ちていたのです。

 

  そして 

  翌日4月1日

  辞令を受け取り働き始めて、

  希望が見事に砕けてからは、

  私は

  この日のことを

  幸せな気持ちと同時に

  苦く思い出すことになります。

 

 

  3月31日は

  天気も良く、

  風もきつくなく

  ぽかぽかとした

  春らしい陽気の日でした。

 

  ちょうど桜も満開。

  せっかくの見頃なので、

  母の提案で

  家族3人で

  お花見に行くことになりました。

 

  私の家族は

  桜の花を見るのが

  好きでした。

 

  私も桜は好きです。

  保育園に通っていた頃から

  桜が好きだったのだと思います。

  園庭には桜の木が3本か4本、

  鳥小屋の近く、

  鉄棒の少し後ろに

  植えてありました。

 

  鳥小屋にはインコと鶏が

  飼われているのですが、

  私は鉄棒をして

  逆さから

  鶏がインコと一緒に

  止まり木にとまっているのと

  桜の花を見上げるのが

  大好きだったのです。

 

  また、

  大学のテニスサークルで

  テニスコートの脇に咲く

  満開の桜を見ながら

  テニスをしたことは

  今も私の楽しく美しい思い出です。

  

  今思えば、

  桜の花は

  私の人生の節目節目で

  鮮やかな記憶として

  刻まれています。  

 

  父も通勤するときに

  桜の花をよく見ていて

  好きだったようです。

 

  母はそもそも

  自然の移ろいが大好きな

  人なので

  桜を見るのも

  好きでした。

 

  もっとも、

  父も母は私が桜に感じて

  いたような

  吸い込まれるような

  美しさに潜む

  怖さは感じていなかったと思います。

 

 

  私が就職したら中々

  家族で桜の花を楽しむ

  なんてできないだろうから

  今のうちに行っておこう

  ということになって出かけたのです。

 

  私達は

  お昼頃に出かけ、

  お弁当を食べながら

  桜を見ることにしました。

 

  お弁当は出がけに

  私の就職前の

  スペシャルな日ということで、

  いつもよりちょっと良い物、

  デパ地下の和食のお弁当を

  調達していきました。

 

  お花見をする場所には

  陽気も良かったので

  気持の良い春の風を感じながら、

  目的地まで

  歩いて行くことにしました。

 

  歩きながら

  私は明日からのことを

  色々想像しては

  うきうきしていました。

 

  明日からは社会人、

  これでようやく

  地元の同級生に会っても

  引け目に思うことはないと思うと、

  心は本当に軽やかでした。

 

  そして

  明日からは雑誌のように

  おしゃれとかはないけれど、

  スーツを着て

  パンプスを履いて

  頑張って働こう!

  どこに配属されるかな、

  同期の子と仲良くなれると良いな。

 

  心の中は希望でいっぱいでした。

  

 

  今にして思えば、

  よくもまあ、

  あれだけ都合良く

  希望しか見ていないな、

  この世間知らず...

  と半ばあきれるくらいの

  ポジティブさでした。

  

  未熟さ故のポジティブさ。

 

 

  悲喜こもごもの

  25年のキャリアを経て

  色々な経験を経た今では、

  当時の自分を愚かだと思う反面、

  懐かしく、まぶしく愛おしく

  思えます。

 

  

  しばらく歩いた後、

  3人でお花見スポットに着きました。

  

  お花見スポットは

  平日の日中にもかかわらず、

  人で賑わっていました。

 

  小さな子供を連れたお母さん、

  高齢者の仲良しグループ、

  今日はお休みなのか

  会社の気の置けない仲間で

  来たと思われるグループ、

  大学生のサークルの子達....。

 

  色々な人がいました。

      お酒が入っていたのか、

  賑やかすぎる人たちもいました。

  

    私が騒々しいのが苦手なので、

      少し賑やかすぎる集団からは

  距離をとろうとしたところ、

  ベンチ等の

  座る場所がありませんでした。

  

 

  桜を見ながら

  お弁当を食べる予定だった私達は

  食べる場所に困ってまいました。

 

 

  「座る場所、ないね」

  「困ったな、お弁当...」と

  父と話をしていると、

  母がおもむろにかばんから

  ビニールシートを取り出しました。

 

  母はこんなこともあろうかと

  座れるように

  ちゃんと敷物を

  持参していたのです。

 

  ビニールシートのおかげで

  私達は

  桜の木の下でお弁当を

  食べることができ、

  満開の桜の花を

  楽しむことができました。

 

 

  お弁当の内容は

  覚えていませんが、

  ただ、

  春の日射しが気持ちよく、

  風が柔らかで心地よく、

  頭上を見上げると、

  吸い込まれるように

  澄み切った青い空が

  広がっていたのは覚えています。

  

 

  そして、

  満開の桜の花々は、

  陽光を受け、

  薄ピンクが

  白く透け、

  空に溶け込むような

  儚い美しさでした。

 

  そのときの私の心には、

  希望しかなく、  

  見上げれば

  言葉を失う美しい景色。

  そして私の側には

  満ち足り穏やかな笑顔の両親。

  私はただただ

  幸せだと思いました。

 

  両親も私が姉と自分を比べて

  悩んでいたので、

  今回無事公務員試験に合格して

  ほっとしていたのだと思います。


  家族中がこのとき、

  おだやかな幸せを

  噛みしめていました。

 

 

  残念ながら、

  この幸せは続きませんでしたが....。

 

 

  HSS型HSPの特性に、

  些細なことに気が付き、

  豊かな感受性を持っている

  というものがあります。

 

  この特性のおかげで、

  HSS型HSPの私達は

  季節の密やかな移り変わりや

  何気ない自然の美しさに

  気づき、味わい、

  楽しむことができるのです。

 

  このときの

  美しい景色を今でも

  鮮明に覚えていられるのは、

  この特性によるものだと

  思います。

 

  幸せな気持が

  景色をより美しく見せ、

  いつもより細かく 

  自然の美しさに

  気づくことができたのだと

  思います。

  

 

  HSS型HSPには、

  高感度の幸せ感知センサーが

  備わっていると思っています。

 

 

  繊細で疲れやすく

  傷つくことが多い

  HSS型HSPの特性に

  苦しめられることは多いのですが、

  日常の密かでささやかな美しさや

  何気ないことから幸せを見つける

  能力があることは、

  私にとって幸せなことです。

 

  

  明日からは

  働き始めてからの

  ことを少しずつ

  お話ししていきたいと思います。

 

   

  

  明日は、  

 

  

       

 

 

 

 

 

   に続きます。