京の錦市場の青物問屋、「枡源」の長男として生まれるも、
商売は弟たちに任せてしまって、しまいには家督を完全に弟に譲り、隠居して絵師として暮らした若冲。
実際には妻を娶らなかった若冲ですが、
物語では、妻を娶ったものの、家のことに無関心で、
若冲を商いに向かせられなかったことや、子がなかなか出来ぬことなどを姑たちに責められ、いびられ、妻は若くして首をくくって死にます。
そして、その亡き妻の弟は若冲を恨み続け、
絵に逃げていたせいで姉は死んでしまったのだと憎み、
そんなぐらいの絵なら自分でも描ける!と若冲の贋作を書き続け、
若冲は義弟の存在に、その絵に、負けぬためにさらに絵の道を究め続け、
憎み合いながらも、二人は互いに己を高め合いつつ絵を描き続けるのです・・・
昨年生誕300年で盛り上がっていましたねー。
図書館本なのでね、やっとね。やっと、回ってきました!
若冲というと、華やかな絵だなぁという印象だったので、
物語の中のぼんやりとした、絵を描く以外なんにも興味のないつまんない男だったのだなぁというのがちょっと意外な感じで。
実際は結婚していないので妻もおらず、当然義弟の存在も結婚してないからいないわけで、
ライバルがいたからこそ、どんどんと彼の絵は昇華していく、
というのは物語としてはまぁうまくはできてるのでよしとしますか・・・
でもどうしても実際の絵が、私にとってはものすごく煌びやかで華やかだと思えるものなので、
そこに若冲自身の苦しみが書き閉じ込められているという物語はちょっと違和感が。
でも、フィクションなのでそれはそれで楽しくは読めました。
『鳥獣花木図屏風』についてはもともと真贋についての諸説があるようですね。
うまく物語ではそのあたり、なるほど、もしかしたらそうだったかもね、
と思える結末ではありました。
フィクションとしてはなかなか面白い作品だったけれど、
何分実際の作品がたくさんある人なので、
絵に対する印象と、物語の中で感じる若冲という人物象に対する感じ方は人それぞれで、
そこに違和感を感じる人もいるかもしれませんねぇ。
いつの日か、実際に、作品をこの目で見てみたいものです!
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