"fumufumu news"第三弾の記事を引用転載しました。

今回で最終記事となる岡田有希子さんの関連記事は、小室哲哉さん

かしぶち哲郎さんによる楽曲提供の裏話を國吉美織さんが語ってくれました。

 

 

「岡田有希子はどんな難曲もクリアできた」新人時代の小室哲哉を大抜てきした元ディレクターが当時を懐古

 

前々回、前回と、現在海外リスナーが約7割という多さを誇ることでも話題の80年代アイドル・岡田有希子について、当時のディレクター、國吉美織とともに振り返ってきた。

 インタビュー第1弾は尾崎亜美、坂本龍一作品、第2弾は竹内まりや、売野雅勇、夏目純作品を中心に考察したが、最終回となる今回は、さらなる注目作について見ていきたい。

 

まだ新人だった小室哲哉を抜てき、岡田有希子は難解な小室サウンドを歌い上げた

 

まず、第8位に「Sweet Planet」、第12位に「水色プリンセス -水の精-」と、小室哲哉が渡辺美里の「My Revolution」などで作家として注目される前の提供作がランクイン。アーティスト全体では、海外リスナーが大半となっている岡田有希子だが、小室哲哉提供の2曲に限ると、国内リスナーが大半となっているようだ(Spotify調べ)。国内にいるTKサウンドのファンが、ヒットの源流を求めて注目しているということだろうか。

 

 「(堀ちえみへの作詞提供が多かった)三浦徳子さんから、小室さんのデモテープが届いたんですが、その音があまりにも新鮮で気になったんです。私は、芸術においては新しいものを常に生み出していくことがとても大事だと思っていたので、ご本人に来てもらいました。そうしたら、まだ自分たち(TM NETWORK)以外に提供したことがないとおっしゃるので、デモテープにあった2曲を歌わせてもらいました」

 

 

 「小室さんの曲がこの順位に!」と楽しそうにランキング表を眺める

  國吉 撮影/山田智絵

 

 

 さらに驚かされるのは、そんなほぼ新人状態の作家を、アルバムの1曲目と10曲目という重要な位置で起用したこと。さらなるヒットへの重圧がある中で、かなり大胆な判断といえるだろう。 

 

「レコーディングの段階から、“小室哲哉さんは今後、とんでもないことになるよね”とみんなで話していて、アルバム『十月の人魚』の1曲目、10曲目に迷いなく入れました。松任谷正隆さんにアレンジをお願いしたときも、“……これ作ったの、誰? すごいねー!!”って、とても感心されていました」  

 

 

 

 『十月の人魚』のジャケットは、水辺にたたずむ岡田の姿が幻想的だ

 

 

そして、肝心の歌入れでも、國吉は岡田有希子の才能に驚嘆したという。

 

 「小室哲哉さんの曲は、難しいですよね。さすがの有希子ちゃんでも歌えるかな? と、実はドキドキしていました。16分音符がたくさん入っており、それをスタッカートぎみに歌うと幼い子どもみたいになってしまいがちで、仮歌の歌い手さんに説明するのも難しく、(キーボード経験のあった)私が自分で歌っていたほどです。その少し前から、有希子ちゃんも私が歌ったものがわかりやすいと言ってくれていたこともあり、今回も難なくクリアしました。竹内まりやさんや尾崎亜美さんなどご自分で歌われる方は、レコーディングにあたって有希子ちゃんに歌唱指導をしてくれましたが、いずれも吸収が早いんです。本当に頭のいい子で、こちらが“もうちょっと、こうしてほしい”と言うと、すべてを把握してくれる子でしたね」

 

 

 1985年の岡田有希子。あどけない笑みを浮かべているが、その才能は

 類まれなるものだった 撮影/佐藤靖彦

 

かしぶち哲郎とのタッグは17曲も! 『Love Fair』で「新しい時代が来たなと」

 他にも、岡田有希子への楽曲提供の特徴としては、ムーンライダーズのドラマーであった、かしぶち哲郎が作詞・作曲・編曲のいずれかで参加した楽曲が17曲と、全アイドルの中でも群を抜いて多いことだ。このSpotifyランキングでも、13位に幻のシングル曲「花のイマージュ」、14位に7thシングル「Love Fair」がランクイン。

 

 
 岡田のまなざしにドキッとする、「Love Fair」のジャケット写真

 

 

当時、ムーンライダーズとしても、ソロの作家としても大きなヒット実績のない中で、'85年のアルバム『FAIRY』から彼を起用し始めたのは、どういった経緯からだろうか。

 

「『花のイマージュ』のとき、私はすでに担当を外れていますが、かしぶちさんを岡田有希子の制作スタッフに引き寄せたのは私です。後任のディレクターも、かしぶちさんが好きだったんでしょうね。

 

 かしぶちさん自身、ムーンライダースの中で、メインではなく独特な味のある曲を歌っていらしたんです。メンバーのみなさんとは、依頼する前からプライベートで面識があり、有希子ちゃんのレコーディングを進めているうちに、“この子は、かなり難しい歌でも歌えるぞ”と気づいて、今こそチャンスだと思いました。アイドル時代のうちに、どんな歌でも歌えるようになっておけば、この先のアーティスト人生に生かしていけるのではと信じて、事務所や(プロデューサーである)渡辺有三さんにも提案したらOKしてもらえました

 

 ムーンライダーズからは、ギタリストである白井良明がポップス系の作家として幅広く活躍し、國吉も堀ちえみの楽曲を多数依頼しているが、

 

「ちえみちゃんには明るい曲調が似合うので、白井良明さんメインでお願いしました。かしぶちさんの曲は、しっとりとしていて、一見シンプルなのに、歌ってみるととても難しいんですよね。まりやさんの曲を歌った人は他にもいましたが、かしぶちさんや小室さんの曲を歌ったアイドルがいなかったのと、私自身、新しいもの好きだったことから依頼を決めたんです」

 

 かしぶちが詞曲を手がけた中で初めてシングルとなった「Love Fair」は、歌詞も抽象的だし、メロディーも音数が少なく、アイドルポップスとはかけ離れた、当時としても前衛的なイメージのある楽曲だ。

 

「独特な世界観を持った、不思議な構造の歌ですよね。『Love Fair』がシングルになったときは、心の中で“バンザーイ!”って言っていました。サンミュージックの会議で、今度のシングルはコレ! って決まったと聞いて、有三さんと思わず顔を見合わせたくらい驚いて、“新しい時代が来たな”って思いましたね」

 

ちなみに、本作はあまりに斬新だったためか、ランキング番組『ザ・ベストテン』では、ラジオやハガキリクエスト部門がいつもほど伸びず、総合で4作続いていたベストテン入りを逃している。オリコンではTOP10入りを継続し、グリコ「セシルチョコレート」のCMソングとなった効果からか、累計売上も前作より伸びているものの、『ザ・ベストテン』が世間的なヒットの基準だった当時、國吉は周囲から責められなかったのだろうか。

 

「(ベストテンに)入らなかったんですね? 今、初めて知りました。でも、単純な曲のほうがすぐに人々に理解される反面、飽きられやすいでしょうし、こういった曲が長く愛されたらいいなと思っていましたね。実際、勢いだけで売れすぎて本人も疲弊しちゃって、やがて売れなくなるよりは、確実に及第点のセールスを維持して長く愛されるほうが、アーティストのためでもありますよね。

 

 でも当時は“そんなやり方をして、いったい何枚プラスで売れるの?”と偉い人に責められてはトイレでよく泣いていましただから、ある程度の売り上げを維持しつつ、制作費を確保するというハンドリングをいろいろ考えましたね。これ以上やったら次の制作費が厳しいな、とか。そういう点でも有三さんは優れたプロデューサーでした。さまざまな音楽の要素、ヒットの要素をいくつも考えて、最適な結論を出すというのが素晴らしかったんです」

 

 

 岡田の主演ドラマ『禁じられたマリコ』(TBS系)のロケ現場にて 

 撮影/藤沢謙

 

 

岡田有希子の曲は「“B面用”はない。シングルのA面を張れる自信作ばかり」

 

 そしてSpotify第16位には、そのB面曲「二人のブルー・トレイン」がランクイン。竹内まりやの歌詞も、杉真理のメロディーも、アイドルポップスとしては実にわかりやすく優れた作品で、岡田有希子のボーカルも非の打ちどころがなく、他のアイドルならTOP10ヒットでも間違いないくらいだ。ただ、「Love Fair」や前出の小室作品と比べると、新鮮味は少なく感じるかもしれない。

 

この曲も、杉さんらしいアメリカンポップス風で、難しいだろうけど大丈夫かなと思ったんですが、有希子ちゃんはこちらの希望どおりに歌えちゃいましたね。決してこの曲の出来が悪いのではなく、『Love Fair』と同時期のシングル候補だったので、必然的にこちらがB面になったんです。基本的に、有希子ちゃんの曲は“B面用”には作っておらず、シングルのA面でも大丈夫!、という自信作ばかりです。ただ、そういう曲ばかりを集めてアルバムを作ると、ちょっと“ごった煮感”が出てしまうので、同じアレンジャーの方に依頼するなど一貫性を持たせて世界観を大事にしました。松任谷正隆さんの起用は、私が大好きだったからです(笑)

 

 

 

Spotify第22位には、松任谷正隆が作曲・編曲をした「あなたを忘れる魔法があれば」がランクイン。同アルバムのオリジナル曲としては最上位だ。

「これは私が大好きだった康珍化さんに歌詞をお願いしたバラードです。もしかして、この曲がいちばん難易度が高いかも? と思いましたが、これも有希子ちゃんは歌えましたね。特にアルバム曲は、3時間のあいだに4曲ほどレコーディングする必要がありましたから、今から考えてもすごいことだと思います」

 

國吉美織から現代のリスナーたちに、感謝を込めて伝えたいメッセージとは? 

 國吉は現在、音楽ユニット・Milly la foretとして活動しつつ、コミュニティFMのFMカオン(84.2MHz、神奈川県央エリア)でトーク番組を担当し、普段の音楽活動やディレクター時代のエピソードなども語っている。また、9月には、“水の中から見た世界”をコンセプトにしたライブを開くにあたって、その楽曲や映像制作に時間をかけているという。

 

 最後に、現在のリスナーに向けてメッセージをお願いすると、

 

「必死に作った音楽を、決して使い捨てではなく、長く大切に聴いていただけているということに、本当に感謝しています。私自身、どの曲も本当に大好きで、どれも可愛いので、お好きなものを自由に聴いてくださったらうれしいです!」

と、笑顔で語ってくれた。

 

 

 「毎日忙しかったですが、制作は本当に楽しかったです」と満面の笑み

  撮影/山田智絵

 

 これは社会全体に言えることだが、とかく、自分が担当しているうちに数字の成果を上げようと瞬間の記録だけを追い求める傾向が、情報化社会にともなってますます顕著になっている。しかし、今回の岡田有希子作品のように、長く聴かれることを目指せば、それが当時は生まれていない世代に伝わったり、海外で聴かれるようになったり、“記憶”されるものとして残っていくものも確実に存在するのだ。こうしたヒット現象は、私たちの生き方にも大きなヒントを与えてくれることだろう。

(取材・文/人と音楽をつなげたい音楽マーケッター・臼井孝)


【PROFILE】
國吉美織(くによし・みおり) ◎クリエーター。イギリス留学後、上智大学軽音楽部でバンド結成。EAST WESTなどさまざまなコンテストで最優秀キーボーディスト賞、作曲賞、バンド賞などを受賞。卒業後ミュージシャンの道を親の猛反対で断念、ポニーキャニオンに入社し
女性第一号の音楽ディレクターとなる。が、上司の「あなたらしい生き方を!」というアドバイスで退社、念願だった創作&演奏活動を再開し、現在に至る。クレジットは、 ディレクター、プロデューサー、ボーカル、コーラス、キーボード、ピアノ、リコーダー、ベース、ティンウィッスル、葦笛、ゲムスホルン、タンバリン、プログラミング、レコーディングエンジニア、ミキシングエンジニア、レタリング、イラストレーティング、フォトグラフ、映像制作、作詞、作曲、編曲、などなど。

 

◎國吉美織 公式HP→https://miorio.net/
◎milly la foret 公式HP→https://www.millylaforet.com/

 

 

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